∴ だから、ひみつだってば




※恋人になる前の設定。









ジャックは悩んでいた。
視線の先にはジャックが気になっている女の子が友達と喋っていた。その彼女とジャックはただのクラスメイトだが、ひょんなことでジャックは彼女に惚れてしまったのだ。今まで自分から好きになったことがないジャックは、初めてのことでかなり動揺していた。



「どうした、ジャック。腹でも痛いのか?」

「……キング…」



見兼ねたキングがジャックに話し掛ける。ジャックは虚ろな目でキングを見つめると、キングは少しだけ話しかけたことに後悔をした。ジャックは両手でキングの肩を掴むと、ぐわんぐわんとキングを前へ後ろへと揺らし始めた。



「僕…っどうしたらいいのかわかんないよぉお!教えてキングー!」

「おお、落ち着けっジャック!俺をぉっ揺らしたとこ、ろでっどうにも、ならないぞぉっ!」



前へ後ろへ揺れるキングにジャックはふと我に返り、両手を放した。するとキングは突然肩を放されたことによって、身体がふらつき尻餅をついてしまった。ジャックは慌てて腰をおろす。



「キングごめん…!大丈夫…?」

「……あぁ、まだ頭の中がぐわんぐわんするが…」



頭に片手を当ててキングはやはり話し掛けなければよかったと再び後悔をした。キングは腰を持ち上げ、それでどうしたんだとジャックに問い掛けた。



「うぅ…あのね、」

「あぁ」

「あっ誰にも言わないって約束ねぇ!」

「…わかった、で?どうしたんだ」

「あのね…僕…」



モジモジしてその先をなかなか言わないジャックに、キングは苛ついた。さっさと言えよ男だろ、そんなことを思いながらジャックが言うまで黙って見守るキング。しかしそれが3分間も続き、待ちきれなかったキングは早く言えよいつまで黙ってんだ女かお前は、とジャックを追い詰めた。



「きっ…気になる子が、できて…」



ようやく話したと思ったらそんなことかとキングは拍子抜けした。ジャックは目を附せてポツポツと語り出す。キングはそれを聞いて腕を組んだ。



「初めてのことでどうすればいいのかわかんない、か」

「そう、ほら僕っていつも女の子から好きになられてばっかでしょ?自分から好きになることなんて今までなくって…」

「然り気無く自慢するなよ…そうだな、トレイとかに言えば協力してくれるんじゃないか?」

「誰にも言わないって約束じゃんかぁ!」

「トレイにくらい言ったっていいじゃないか。一応友達だろ?」

「…だめ!あんまり広めないで欲しいんだって」

「……話しかけに行けばいいんじゃないか?」

「…無理」



話しかけになんて行けない、だって何話したらいいかわかんないんだもん!と女みたいなことを言うジャックに、キングは溜め息をついた。めんどくさい、そう思ったことを口にしなかっただけ褒めて欲しいところだ。取り合えずトレイにもチクろう、とキングは思ったのだった。





(ジャック!あなた、なまえのことが気になるんですね!)
(えっ!?ちょ、キング!約束破んなよー!)
(私がキューピット役やりましょうか?)
(いいっいいって!ぼ、僕だけで頑張るから!)
(遠慮なさらず!)
(トレイに言うとめんどくさいから言ってほしくなかったのにー!)
(友達だろ一応)
(一応って何ですかキング!?)



(2012/1/28)
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