∴ だって、大好きなんだもん


視線を感じる。見られてる、確実に。



「……ジャック、どうしたの?」
「んー?別にぃ。あ、僕のことは気にしないでいいから!」



そう言われても、気にならないわけがない。今、私とジャックは教室で課題に取り組んでいる。教室に二人っきり、なんてことはなく、ちらほらと生徒が居残って課題に取り組んでいた。キングとトレイは課題は既に終わったからと言って、ジャックを置いて最近できたカフェへと行ってしまった。あの二人は羨ましいくらい要領がいい。見せてもらえばよかったと思いつつもジャックと課題ができるのは嬉しいから良しとしよう。
しかし、そんなジャックは課題に取り組むことなく、終始にこにこしながら私を見つめていた。なんかすごく恥ずかしい。



「…気になるよ」
「え、そう?」
「うん…その、何かあった?」



そう言うとジャックはきょとん、とした顔をして、そしてまたにへらと笑った。



「別になんにもないってー」
「じゃ、じゃあなんでずっと見てくるの」
「見ちゃだめ?」
「そんなことは、ない、けど…」



ジャックは悪気があって見つめてるわけじゃないし、嫌がらせをしているわけでもない、らしい。見つめられることなんて人生で一度もなかったから、私にとっては嫌がらせに近いのだけど、相手はジャックなので我慢はしようと思えばできる。
でも恥ずかしい。好きな人に見つめられるのってすごく恥ずかしいのだ。



「は、恥ずかしいんだけど」
「恥ずかしい?」
「あ、あのさ、逆に、私がずっとジャック見てたらどう思う?恥ずかしくならない?」
「えぇー、僕は見つめられたら見つめ返すかなぁ」
「…そうですか」



どうやらジャックにはそういうことはてんで効かないらしい。なんで見つめてくるのか、それを聞いてみようと私はペンを置いてジャックを見た。ジャックはん?と小首を傾げて、私を見つめ返す。うん、それかわいすぎ。



「〜っジャック!」
「なぁに?」
「なんで、見てるの?」
「なまえを?」
「そう」



ジャックが私を見つめてくる理由に私は呆然することとなる。



「だって、なまえのこと大好きなんだもん!なまえと付き合う前は自分の気持ちがなまえにバレないように、ちらちらとしか見れなかったけど、今はこうしてなまえと付き合ってるからこれからは堂々と見つめることができるなぁって」
「………」
「なまえ?」
「…ごめ、ちょっとトイレ…」
「大丈夫?着いていこうか?」
「だだ大丈夫!すぐ戻ります!」



あんな殺し文句を言われたら、顔が真っ赤になるに決まってるじゃないか!

(2012/10/18)
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