∴ ごめん、もう一度言って?




早朝、ふと目が覚めたなまえは窓の外へ目線を移した。
木々の葉が寒さでほとんどなくなり、部屋の空気も段々冷たくなってきて冬がすぐそこまで来ているんだと実感する。ぶるっと身震いひとつすると丸まるように寝返りをうった。



(…あ)



寝返りをうった先にはジャックの大きな背中が目の前にドン、とあってそういえば昨日ジャック泊まったんだっけ、と覚醒していない頭の中でぼんやり考える。その大きな背中を見ていたら抱きつきたい衝動に駆られ、なまえはもぞもぞと動きジャックの背中をギュウと抱き締めた。



「…んぅ?なまえ…?」
「あ、ごめん、起こしちゃった?」
「んーん……ふふ、なまえってばー朝からだいたーん」



んふふ、と変な笑い方をするジャックになまえもへへ、と笑い返す。ジャックの背中の体温とちょうどいい抱き心地にウトウトしてきた。
それなのにジャックはもぞもぞと動き出し、背中に抱きついていたかったのにいつの間にか真正面からジャックに抱きつかれていた。ジャックの腕の中に包まれてより一層暖かくなる。
少し顔をあげると眠そうな表情だけど優しく微笑むジャックがいた。



「………」
「えへへー」
「…ふふ」



その顔があまりにもだらしなくて思わず笑ってしまう。笑われたのにも関わらずジャックは笑顔のままだった。
かわいいなぁ、そう思ったが口には出さない。あまりそういうことを言うとジャックが拗ねてしまうからだ。なまえはジャックの腰に腕を巻き付かせ胸に顔を埋める。



「…すき」
「へ?」



独り言のように呟くなまえにジャックは目を丸くさせ、なまえを見るが自分の胸に顔を埋めているから表情が見えない。
自分の聞き間違いではないのならなまえは今すき、と言ったはず。ただ確証はできなかったため、ジャックはなまえを抱き締めながら口を開いた。



「ごめん、もう一度言って?」
「…聞こえなかった?」
「う、うん…」



なかなかなまえからそういうことを言われないから、欲が出てしまった。顔を埋めながら喋るなまえに、ジャックは苦笑を浮かべる。もう一度言ってくれないかなぁ、そう思いながらなまえからの返事を待っているとなまえはゆっくり顔を上げてジャックと目線を合わせた。



「………」
「………」
「…ジャック」
「ん?」
「すき、だいすき」



眠そうな顔で、だけど笑みは浮かべていて。
そう言ったあとなまえは恥ずかしかったのかすぐ顔をジャックの胸へ埋めた。
ジャックはしばらく固まったあと、自然とにやけ顔になりなまえに負けじと僕もだいすきだからねぇ、と言って強く抱き締めたのだった。

(2012/9/12)
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