∴ もう少し、一緒にいよう




今日はジャックとデートの日。付き合い始めて初めてのデートの日だ。天気は快晴、カップルのデート日和で私は緊張しながら家を飛び出した。

待ち合わせ時間にも間に合い、ジャックが現れ、ぎこちなく挨拶したあと映画館へと歩き出す。



「は、晴れてよかったね」
「だねぇ、まさにデート日和!」
「………」
「………」



ぎこちなさすぎて会話が無くなってしまう。話したいのにこういうときに限って話題が見つからず、私は下ばかり俯いていた。
どうしよう、つまらないよね、何を話そう。
緊張もあって頭が働かない。しばらく黙ったまま歩いていたら、ジャックが遠慮がちに口を開いた。



「ね、ねぇ、なまえ」
「は、はい!?」
「僕といて、つまんない?」
「え!?」



驚いてジャックの顔を見ると、すごく困った顔をしていた。困ったというか、悲しそうな…。私は慌てて首を横に振り、励ますように口を開いた。



「まさか、楽しいよ!ジャックといるだけで、すごい嬉しいし!ただ、緊張して何話せばいいか、わかんなくて」



ごめんね、と謝るとジャックはしばらく黙りそして、なまえも僕と同じ気持ちだったんだね、と優しく声をかけてくれた。恥ずかしくなった私は再び下を俯く。そんな私の右手に、暖かい何かが触れた。



「!」
「へへ、手、繋いでいい?」
「も、もう繋いでるじゃん!」
「あ、そうだった」



右手にジャックの左手が重なり、ギュッと力を込められる。私はそれに答えるかのようにキュッと少しだけ力を入れたら、ジャックが物凄い笑顔をしてカワイイなぁもう、と呟いた。















映画も見終わり、このあとどうする?とジャックに問い掛けられる。まだ帰るには早いような気がするし、何よりまだ私はジャックと一緒にいたい。しかしそう簡単には言えなかった。言えればどんなに楽だろう。



「じゃ、ジャックはどうしたい?」
「僕?僕はねぇ、…なまえが良かったら、だけど」



照れ臭そうにはにかみながらジャックは私にしか聞こえないような小さな声で言った。



(もう少し、一緒にいたいなぁ)
(!わ、私も一緒にいたい!)





(2012/7/9)


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