∴ 僕が君を好きなわけ





「そういえば、ジャックってなんで私のこと好きなの?」
「へ?」



何気無く思ったなまえはジャックにそう問い掛ける。ジャックは突然の質問に目を丸くさせなまえを凝視した。お互い見つめあったあと、ジャックは腕を組み考え始めた。



「なんでって言われてもなぁ…またなんで急に?」
「なんとなく、だけど。でも今思えばなんでジャックは私みたいなのを好きになったの?」



ジャックみたいなかっこいい人が、どうして私みたいなのを選んだのか。そうなまえは言いたかった。その言い分は自分に自信がないから、ともとれる。ジャックはそう言うなまえの頭に手を置き、優しく撫でた。



「私なんか、とか言わないのー。僕はなまえだから好きなんだよ」
「…私だから?」
「そ、なまえだから」
「私以外に良い子いるのに」
「なまえだから好きになったんだってー」



私だから好きになった、と言われてもなまえは納得がいかなかった。自分以外にも可愛い子はたくさんいるし、自分よりも良い人はいるはず。なのにジャックはどうして自分なんかを好きになってくれたのだろう。



「もう、そんな顔しないの」
「だって…納得いかないもん」
「そうかぁ…んー…」



ジャックは眉間にシワを寄せて唸る。そんなジャックを見て、なまえは自己嫌悪に陥った。
なんでこうジャックを困らせることを言うのだろう。ジャック、自分のことめんどくさい奴だなぁ、とか思ってるよね…。
そう思ったなまえはジャックに謝ろうと口を開いた。



「ご、ごめん、困らせちゃって」
「なまえの笑った顔とか」
「え?」
「なまえの真剣な顔、あとはぁ、僕と話してるときの表情や仕草とか、友達と話してるときの表情も。それと他の人が困ってたら助けるところとか、落ち込んでる人を慰めてるとこ。怒ってる人を一生懸命宥めてるところもかなぁ。あ!なまえが困ってる顔とか泣きそうな顔も好き」
「………」
「要するに、なまえの全部が好きなんだぁ」



にっこり笑うジャックに、なまえは呆然とする。そして我に返ると恥ずかしい気持ちが沸々と沸いてきて、ジャックから顔を背けた。



「なまえ?」
「…変なとこ見ないでよね」
「そお?だって好きだったんだもん」
「わ、わかったから」
「そう言うなまえはなんで僕を好きになったのさぁ」
「うっ……」
「ねぇ、なんでー?」
「…ジャ、ジャックだから!」
「僕だから?」
「っジャックだから好きになったの!」





僕が君を好きなわけ



(2012/7/1)
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