∴ キャンディ、食べる?





やってしまった。

朝起きたら一時間目の授業が始まる10分前で、慌てて飛び起き5分で身支度を済ませ、授業にはギリギリ間に合った。一時間目が始まって出席をとっているクラサメをよそに、ジャックのお腹が小さくグゥ、と鳴りジャックはハッとする。寝坊したせいで起きてから水くらいしか口にしていないことに。



(昼まで持つかな…)



クラサメが生体について説明しているがまったく耳に入ってこない。それよりも睡魔と空腹がジャックを襲う。昨日ゲームを深夜までやってたのが失敗だったな、と心の中で呟き机に顔を伏せた。





ふと目を開け、顔をあげると皆席を立って好きに喋っているのを見て放課になったんだな、と気付く。ジャックは一時間丸々寝てたのか、と思いながら欠伸と伸びをする。伸びをしたとき今度はお腹の空腹感がジャックを襲った。



(お腹空いたぁ…)



あと三時間もこの空腹に耐えなければならない。パンでも持ってこればよかったと後悔したが、今さら後悔したところでこの空腹が満たされるわけではないので諦める他なかった。
キングとトレイから何か貰おうと思いついたジャックは、キングとトレイの席に視線を移す。しかしそこは空席になっていて、二人は未だ学校に来ていないのだとジャックは肩を落とした。
キングはまだしもトレイまでサボるなんて、あの二人は本当に信じられない。サボるくせに成績は優秀なのだから尚更質が悪い。二人には一応メールを送っておくが、返信には期待しないほうがいいだろう。



(………ん?)



メールを打っている最中、ジャックは微かに甘い香りがしたのを見逃さなかった。空腹に飢えているせいか、余計そういう匂いには敏感になっていた。その匂いの元になるところを探す。



(…なまえ、さん?)



その甘い匂いは、最近席替えをして隣になったなまえのところから匂っていた。香水なんてしていたっけ、と今までの日々を振り返るが今日以外に甘い匂いを放っていた記憶はない。



(この匂い…いちご…?)



ほのかに香るいちごの匂いに、ジャックのお腹が反応するようにグゥ、と鳴る。ジャックはもしかして、と期待するかのように次の授業の準備をしているなまえに声を掛けた。



「なまえさん」
「え?あ、ジャックくん?ど、どうしたの?」
「甘い匂い、するんだけど…」
「え、ごめん!い、嫌だった?」
「いやいや、全然嫌じゃないよー!ただ気になったから」



この甘い匂いの正体は何なのか。できたら食べ物系がいい、なんて期待しながらジャックはなまえを見つめる。なまえはポケットに手を突っ込み、手に持っている物をジャックに見せた。



「甘い匂いってこれだよね?」
「!それ、」
「いちごの飴、小腹が空いたとき用にって持ってきたんだ…あ、食べる?」
「いっいる!」
「はい」



なまえは複数あるいちごの飴の袋をひとつ掴んでジャックに手渡す。ジャックはそれを受け取ると大袈裟なくらいなまえにお礼を言った。そして袋を開け、口に放り込むと、甘いいちごの味が口いっぱいに広がる。その味に頬っぺたが落ちるんじゃないかと思うくらい、美味しかった。



「んーんまいっ!」
「そうかな?」
「うんっ、今まで食べてきたなかで一番おいしいよ!」
「そ、そんなに?」



普通のいちごの飴にそんなに喜んでくれるとは思いもしなかったなまえは苦笑を浮かべる。ジャックがおいしいおいしいと食べているのを見て、まだいる?と聞いてみたら欲しい!と即答するジャックだった。





(なまえさん、今日はオレンジの匂いする!僕にもちょうだい!)
(はい、どうぞー)
(ありがとー!えへへ、なまえさんが隣の席で本当良かったぁ)
(え!?そそそっか…!)



(2012/6/5)
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