∴ ちいさくて、やさしいキス





最近やっと暖かくなった気がする。雲ひとつない太陽がサンサンと照り付けるなか、私とジャックは外にも出ないで部屋の中でまったり過ごしていた。たまにはこういう日も悪くない。



「なまえの部屋って暖かいねぇ」
「この部屋、日当たりいいもんね」
「それもあるけどぉ、なんかなまえの暖かみも感じるんだよー」
「なにそれ」



プッと吹き出せばジャックはトロンとした顔をして、笑うなよーと返してくる。ジャックは私のベッドに寝そべり、私はベッドを背もたれにして座って本を読んでいた。と言っても本の内容なんてちっとも頭の中に入ってこないけれど。ジャックに眠い?と聞けばんー、と唸るだけだった。



「ねむいようなーねむくないようなー?」
「顔、眠そうだよ?」
「僕いつも眠そうな顔してる?」
「いやしてないけど。今だけ眠そう」



ポワンとするジャックに、私は自然と頬が緩む。いつものジャックはかっこいいが、今のジャックはかわいいな。母性本能をくすぐられる感じ。私は本を置いてジャックの頭を撫でる。今日はいつものオールバックではなく髪の毛をおろしていた。サラサラな金色の髪の毛が羨ましい。



「…子ども扱いしないでよー」
「え?別に子ども扱いしてるつもりはないけど…」
「いい子いい子ってしてるじゃんか」
「あぁ」



いい子いい子してるつもりはなかったが、ジャックがそう言うならやめておこう。ごめんね、と一言謝るとでもね、とジャックは口を開いた。その表情はとても優しかった。



「マザーよりも、嬉しい」
「!」
「へへ、皆には内緒、ね?」
「…うん」



照れたように言うジャックが愛しくて、私はジャックに抱き着いた。ジャックの匂いでいっぱいになる。この匂いが私は大好きだ。気持ちが暖かくなるし、ドキドキするから。もしかしたら私は匂いフェチなのかもしれない。
どしたのー?とジャックの声が頭上から聞こえるが、別にーとだけ返しておく。愛しいって思った、なんてこっ恥ずかしくて言えるわけがない。ジャックの隣に寝転んで、お互い顔を見合わせる。ジャックの整った顔を見て、かっこいいなぁとしみじみ思う。



「なまえも寝る?」
「うーん…寝ようかなぁ」



横になるとすぐに眠気は襲ってきた。眠くなるのはこの優しい雰囲気のせいだと思う。眠気に勝てるわけもなく、段々瞼が重くなってきた。優しい表情で微笑むジャックに、キュン、と胸の奥が鳴ったような気がした。眠そうな私にジャックが優しく頭を撫でてくれる。



「おやすみ、なまえ」
「ん、おやすみ」



ゆっくり瞼を落とせばすぐ夢の中へ堕ちていった。


夢の中でも私はジャックといて、しかも額にキスされてる夢だった。そんなこと恥ずかしいからジャックに言えないけど、夢の中でも私は幸せな気持ちでいっぱいでした。




(2012/5/4)
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