∴ 僕だけが見ていた恋





僕から見て、二人は完璧に両思いだ。きっとクラスの皆も気付いてるだろう。それくらい、二人はわかりやすかった。なまえがジャックを見る目も、ジャックがなまえを見る目も優しいと思う。僕たちは幼い頃から一緒に居たけど、ジャックがあんな優しい目をできたなんて最初は驚いたものだ(ジャックに失礼だが)。もちろんそれは僕以外の皆も驚いていた。でもそれと同時に嬉しくも思った。ジャックはあまり自分というものを出さない。いつも自分を隠して皆を励まそうと笑ってて、そのせいか知らないがジャックはお調子者だとか言われるようになってしまった。そのジャックが、いつもポジティブだったジャックが、なまえのことになると落ち込んだりスゴい笑顔だったり悲しそうな表情をしたり、と喜怒哀楽をはっきり出していた。
相談を受けているだろうトレイもキングも、ジャックの変わり様には驚いたらしい。



「あ、」



噂をすればなんとやら。
クリスタリウムにジャックとなまえが仲良さげに話をしている姿が目に入った。やっぱり僕から見たら二人は恋人みたいでそれが微笑ましくもあり羨ましくもあった。
なまえが好きというわけではない。ジャックという人間性を自然に出させているなまえは凄いと思う。だからかな、素直に羨ましいと思ってる自分がいる。



「あ、エース!」
「!」



なまえが僕に気付き、手を振ってくれた。それを返してふとジャックのほうへ視線を投げかける。ジャックの表情は何とも言い難い表情をしていた。悲しいような、寂しいような、はたまた怒っているような、そんなジャックに僕は苦笑するしかなかった。



「本借りに来たの?」
「まぁ、そんな感じかな」
「エースって本当真面目だよねぇ」
「ジャックも見習ったら?」
「え!」



百面相とはこのことを言うのだろうか。なまえの何気無い一言に一喜一憂しているジャックに暖かい気持ちが込み上げてくる。なまえならジャックのことを大切にしてくれるだろうし、ジャックもなまえのことを大切にするだろう。アワアワしているジャックになまえは冗談だよ、と苦笑を浮かべた。それを聞いてホッと安堵の息を吐くジャック。ああ、やっぱり。



「お似合いだな」
「?何が?」
「なまえとジャックが」
「え?!」
「へ!?」



僕がそう言うと二人はたちまち顔を赤くさせた。ほら、こんなにも分かりやすいのにまだ気付かないなんて。僕はもどかしい気持ちを胸に、邪魔だろうから、と言ってクリスタリウムを後にした。





(エースめぇ、余計なことを…!)
(私とジャックがお似合いって…は、恥ずかしい…!)



(2012/5/3)
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