∴ ゆっくりと恋してる




春が近くなって暖かくなり、天気が良いときは裏庭に出てひなたぼっこをしていた。ひなたぼっこにはジャックも必ず着いてくる。付き合ってからもうだいぶ経っているからクラスの人からも冷やかされることはなくなった。裏庭にあるベンチに2人仲良く座り、ジャックが私のお弁当をつまみ食いしながら昼食を済ませる。



「あー暖かいねぇ」

「そうだね、」



もうすぐ春休みを迎える。春休みが終わったら私たちはひとつ上の学年に上がる。そういえばこの間、卒業式をやったけど先輩たちすごく泣いていた。先輩がいなくなって寂しいな。ナギ先輩はいつも通りだったけど、私の頭を撫でて寂しくなるなと呟いたのはきっと本当の気持ちだったのだろう。



「ねぇジャック、私たちが卒業するときってどんな感じなのかな」

「?どしたん?急に」



私たちが卒業するなんてまだまだ先だと言うのに何故かそう思った。私がなんとなく、と言えばジャックは少しだけ黙って私の手を握った。



「先のことなんてわかんないけど、きっと皆いつも通りなんじゃないかなぁ」

「…そうだよね」

「あぁでもナインあたりが号泣しそうだよねぇ!」

「あは、あるかも」



号泣するナインなんて、すごく見てみたい。
あとはぁ、サイスもクラサメ先生と別れるのが辛くて泣きそうだし、セブンは後輩からもらい泣きしそうだよねー、キングとトレイはいつも通りだね絶対。
卒業、なんて実際目の当たりにしたら卒業するという実感湧かないんだろうな。そう思いながらジャックの話を聞いていると、僕らはー、のところで少し黙った。どうしたの?と言うとジャックは照れ臭そうに笑った。



「なんでもない!」

「えーなんなのか気になる」

「いつか教えてあげるー」

「今言って欲しいのに」

「まぁまぁ、再来年まで待ってて」

「ながっ」



再来年、私たちが卒業する年だ。ジャックが何を言うかわからないけど、私たちの関係がジャックの中では再来年まで続いてると思ってるのを聞けてよかったとホッとする。再来年かぁ、何を企んでるのかわかんないけどその時まで待っててみよう。




(やっぱりナイン大号泣してるね)
(僕の予想大当たりってね。あ、なまえ。1年のときに僕が言ったこと、覚えてる?)
(え…あ、あぁそういえばなんか言ってたね)
(うろ覚えかぁ…僕ショックー)
(ごめんごめん!で、あのときジャックは何言いたかったの?)
(…えーとね、わ、笑わない?)
(?うん)
(う、……コホン!その、さ…ぼ、僕と、結婚を前提にこれからも付き合ってください!)
(!!)

私が頷くとジャックが飛び付いてきた。
その後、皆から野次を飛ばされたのもジャックの予想通りだったそうな。



(2012/3/6)

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