∴ 愛すれば愛するほど









ジャックはなまえを探していた。教室にも裏庭にもリフレッシュルームにもサロンにも、なまえが行きそうな所をくまなく探していたが見つからなかった。そういえばクリスタリウムには寄ってないな、と思ったジャックはクリスタリウムへと足を運んだ。クリスタリウムに入ると、なまえが席に座っているのを発見した。どうやら課題をやっているらしい。ジャックは見つかったことにホッと安心して、なまえの方へと歩き出した。



「ここはあの方式を使うんだ」

「ふんふん、なるほど…。エースってば本当分かりやすく教えてくれるから助かるよー」

「…そ、そうかな」



ジャックの足はピタリと止まり、体を本棚のところへ隠し顔だけを覗かせた。そこには隣同士で座っているなまえとエースの姿があった。エースはなまえに褒められ、頬を若干赤くしていた。



(な、なんであの二人…!?)



ジャックは二人の姿を食い入るように見つめる。なまえとエースの肩がくっつきそうなくらい距離が近くて、ジャックは沸々と嫉妬の情が沸いてくるのが自分でもわかった。一旦落ち着こう、と深呼吸をしていると二人のほうからごめん、と聞こえてきた。ジャックはすかさず二人のほうへ目を移すと、なんだか照れ合っている二人の姿が目に入った。



「ごめん、近すぎたね」

「ぼ、僕のほうこそごめん…!」



二人のやりとりにジャックは我慢しきれず、足早になまえの方へと向かった。なまえはジャックに気が付くと、頬を緩ませてジャックを迎えようとした。しかし、ジャックは無言でなまえの腕を取り出口へと向かおうとする。



「!ちょ、ジャック?どうしたの?ていうか私、荷物…」

「……なんで僕から離れたんだよ!」

「!」



急に声をあげたジャックに、なまえは身体を強張らせた。クリスタリウムの中はシンと静まり返り、二人は注目を浴びていた。なまえは空気を察してジャックに荷物持ってくるから待ってて、と言い荷物が置いてある席に戻る。エースは小声で大丈夫?となまえに言うと、なまえは眉を下げてごめんね、と謝りジャックの元へと戻っていく。なまえは無言のままのジャックの手を取り、周りに謝りながらクリスタリウムを出た。



「………」

「…ジャック、ごめんね」

「!」



ジャックはなまえを見ると、辛そうな顔をしてジャックを見つめていた。なまえは悪くないのに、とジャックは歯を食い縛った。なまえと楽しそうに笑っているエースに嫉妬して、照れ合っている二人を目にして我慢できなくなった。自分がなまえのことを好きすぎて、こんな行動をとってしまったばかりになまえを傷付けてしまった。
ジャックは顔を俯かせ、ごめん、と呟いた。



「…ううん、ジャックが謝ることないよ」



自分を責めずに優しく接してくれるなまえにジャックは衝動的になまえを抱き締めた。身体をきつく抱き締めるジャックに、なまえは優しく背中を撫でるのだった。



なまえのことを愛しすぎて、自分が自分じゃなくなりそうで、なまえがいなくなったらなんて怖くて考えたくもない。いっそ、この世界がなまえと僕だけだったらいいのに──。





(2012/2/13)
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