∴ やるときはやりますよ















なまえと付き合い始めてもうすぐ半年が経とうとしていた。スタジオの中でキング、トレイ、ジャックは練習も終わり雑談をしていた。



「最近いい女がいないな」

「そうですね。今度他の組でも回ってみますか」

「そうするか。……なんだ、ジャック、難しそうな顔して」

「ああ、ジャックは私たちに着いてこなくて大丈夫ですよ。彼女が泣いてしまいますからね」

「……いや行かないけどさぁ…ちょっと聞きたいことがあるんだよねぇ」



難しそうな顔をするジャックに二人は首を傾げた。聞きたいことってなんですか?とトレイが聞くとジャックは何故か照れ始めたのでさらに二人は首を傾げた。



「大したことじゃないんだけど」

「何照れてるんだ?気持ち悪いからさっさと言え」

「気持ち悪いってひどっ!ん〜………その二人はさ、もし誰かと付き合ったとして、き、き、キス…はどのタイミングというか…いつするの…?」

「俺は付き合い始めた初日だな」

「私は雰囲気で察しますね」

「……さいですか」



二人に聞いた僕がバカだったと呟くジャックにキングとトレイは顔を見合わせた。そんなことを聞くジャックに、二人はなんとなく意図がわかってしまい、二人して鼻で笑った。



「なまえと付き合い始めてどれくらい経ちましたっけ?」

「!…は、半年…」

「半年でどこまでいったんだ?」

「………」

「私たちで良ければ相談に乗りますよ」

「ああ、友達なんだから助け合わないとな」

「トレイ…!キング…!」



顔を輝かせるジャックに、トレイとキングは心の中でほくそ笑んだ。二人はバカにする気満々だ。友情に感動したジャックはそんなことに気付かずに口を開いた。



「僕となまえさ、付き合い始めてもう半年経つんだけど」

「「ああ(はい)」」

「その……わ、笑わない?」

「「ああ(はい)」」

「情けないことにまだ、手…しか繋げてないんだよね…」

「「(やっぱり)」」



だいたい、いつキスするかと聞いてくるということは、自分はまだ体験していないと言っているようなものだ。トレイとキングはジャックの悩みを考えるふりをして、どうジャックをからかおうか考えていた。
先に口を開いたのはトレイだった。



「簡単ですよ。雰囲気を作ればいいんです」

「雰囲気かぁ…僕トレイみたいに雰囲気作るの苦手なんだよねぇ」

「自分の部屋に呼び出してそこで押し倒して奪えばいい。あわよくばその先に」

「ちょちょちょちょーっと待った!な、なにその押し倒すとか!そんなの無理に決まってるじゃん!ていうかあわよくばその先って何言う気なんだよ!」

「その先というのはですね、所謂セ」

「いいい言わなくていいからぁあ!お、お前ら真面目に答える気ないだろ!」

「何言ってんだ。俺は至って真面目だ」

「私も至って真面目ですよ」

「あああー!お前らを信じた僕が馬鹿だったぁあ!」



ジャックは茹で上がった蛸みたいに顔を真っ赤にさせて頭を抱える。そんなジャックにトレイとキングはにやりと笑った。ジャックだけ彼女がいるという事実と聞いてもいないのにノロケ話をしてくることが、二人を苦しめていることにジャックは気が付かなかった。茹で上がったジャックに追い討ちをかけるかのようにキングがささやいた。



「いいよなぁ、お前は。俺らと違って触ろうと思えばいくらでも触れるし」

「さわっ!?」

「そうですよねぇ、あの女性独特の膨らみを触ろうと思えばすぐ触れますし」

「膨らみ!?」

「あーんなことやこーんなこともし放題だしな」

「や、もうやめてくださいぃぃ!」



悲鳴にも似たジャックの叫びはスタジオの外に漏れることはなかった。次の日、なまえを見るたび茹で上がった蛸みたいに赤くなるジャックの姿があったのだった。





(トレイとキングめ、ちくしょう…!あぁぁ…キスできる日はいつになるんだろ…うあっ、こ、こっち見ないでー!)
(……ジャック、どうしたんだろ)



その2ヶ月後、ようやくキスできたとかできなかったとか。





(2012/2/9)
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