∴ 小さなおまじない










席替えをして好きな人と隣になれたなまえは浮かれていた。しかしせっかく好きな人、ジャックの隣になれたというのに話しかけることができないでいた。



(……かっこいい…!)



なまえはジャックを盗み見ていると、目線に気付いたのかジャックがなまえに振り向いた。バチリと目が合い、なまえは慌てて目線を黒板へと向ける。



(目、合っちゃった…!)



もしかして見てたの気付かれた?とどくどくと大きく脈を打つ。ジャックはなまえと目が合った後、目線をそらされたことにショックを受け肩をガックリと落としていた。



「……あ」



ジャックが何かに気付きなまえのほうへと振り向いた。



「…なまえさん」

「!は、はい…?」



突然名前を呼ばれたなまえは身体が跳ね上がる。そして顔をジャックのほうへ向けると、自然とジャックと目が合う。なまえは目線を斜め下にずらし、目線を合わせないようにした。



「(目線ずらされた…)あの、さ…辞書貸してくれない?」

「あ、うん…ど、どうぞ」



なまえは鞄を探り、英和辞書を取り出すとジャックに渡した。ジャックはありがとう、とお礼を言い辞書を受け取る。なまえはいえいえ、と返した後すぐに目線を黒板へと移した。



(…さてと)



ジャックは借りた辞書を手にノートを覗き調べたい単語の意味を調べる。頭文字がMのところまでペラペラと捲る。するとLの部分に四つ折りされてある紙を見つけた。白い紙には青いペンと赤いペンで何かが書かれていた。



(これ、なんだろー)



ジャックはそれを手に取ろうとしたとき、隣から叫び声が聞こえた。



「うやあああ!」

「!?」

「……どうした、なまえ」

「なっなんでもありませんすみません!」



なまえはジャックからその紙を奪い取るとささっと机の中にしまった。ジャックはびっくりしてなまえのほうを凝視すると、なまえは焦ったようにごめんなさい、と謝った。一体何の紙だったんだろう、そう気になって仕方ないジャックだった。








(お、おまじないバレるかと思った…!)
(何だったんだろ、すごい気になる…)



(2012/2/4)
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