∴ 手作りチョコレート バレンタインデーに向けて、私はレムとデュースと買い物に来ていた。チョコを作るための材料を買いに来たのだ。少し大きいショッピングセンターに入り、この時期になると絶対セッティングされる、バレンタインデーのコーナーに足を踏み入れた。 「さすが、こんな日はたくさん人いますね…」 「もう明後日はバレンタインデーだもんね」 「レムはマキナにでしょ?デュースは本命いないの?」 「えぇ!?ほ、本命なんていませんよ!と、友達にあげるだけです!」 「ムキになるとこが怪しい、ねぇレム」 「ふふ、そうだね」 デュースをからかうと、デュースは顔を赤くさせてからかわないでください!と声をあげる。デュースったらかわいいなぁ、本当。レムは板チョコを手に取り、私たちに振り返った。 「いくついる?」 「どれくらいいるんだろ?」 「私は6袋くらいですね」 「え!?デュース、ちゃんと計算してきたの?!」 「なまえは計算してないの?」 「……れ、レムも計算してきたんだ…」 レムとデュースは呆気にとられている私にクスリと笑った。まさか、計算してくるなんて思いもしなかった。いつも適当に買って、余ったら自分で食べてるだなんて口が裂けても言えない。私は苦笑いを浮かべて、8袋くらいかなぁと言ったらそんなに?と突っ込まれた。 「お、お母さんの分も買わなきゃいけないからさー」 「あぁ、そういうことね」 「お母さんも作るんですね」 「まぁ、ね…あはは」 8袋と言ったからには後に引けなくなってしまい、お母さんを言い訳に使う。レムとデュースはあっさり退いてくれたのでよかったがこれがケイトだったらと思うと、お腹を抱えて笑うケイトの姿が頭の中に浮かんだ。 「なまえは何作るの?」 「え、あぁー…無難に生チョコ、かな。友達にはトリュフとかにしようかなぁって。レムとデュースは?」 「私はガトーショコラかな」 「私はチョコロールケーキです」 「…………」 なんか負けた感じがするのは何故だろう。そうだよね、無難に生チョコとか言ってる場合じゃない。もっと二人みたいに豪華な物を作らなければとは思うけど…うん、来年でいいや。去年もそんなこと言ってたような気がしないでもないが、もう気にしないことにしよう。 私たちは一度じっくり見るために別れて、買い終わったら自販機の前に集合という形をとった。レムとデュースと別れ、材料を探す。 「生クリームとココアパウダー…アーモンドプードルとホワイトクランチ、と」 生チョコの分とトリュフの分をカゴの中に入れる。材料はだいたい揃ったから、あとはラッピング類だ。私はチョコのコーナーからラッピングコーナーに移動した。友達には10枚入りのを買うとして、本命に渡すラッピングはどれにしようかな。 「そういえばなまえさんの本命は誰なんですか?」 「あ、私も気になる!」 「!い、いつの間に!」 いつの間にデュースとレムがラッピングコーナーにいたのか。ラッピングに集中し過ぎて気が付かなかった。本命は誰、と言われて顔に熱が集まるのがわかった。恥ずかしくなり顔を俯かせると、レムとデュースはもっと詰め寄ってきた。押しに負けた私は仕方なく本命の相手の名前を呟いた。 「じゃ、」 「「じゃ?」」 「……ジャック」 「へぇー!あの人かっこいいよね」 「あの人怖くないんですか?」 「ぜ、全然怖くないよ!面白いし優しいし」 デュースは優等生だからか、どうやらジャックを怖がっているらしい。私は今までジャックにしてもらったこととかを力説していると、レムがプッと噴き出した。 「本当、ジャックが好きなんだから」 「え!?」 「ふふ、なまえさんがジャックさんのこと好きなのはよくわかりました」 「……うぅ」 なんだか恥ずかしくなった私は気を紛らわすためにラッピングのほうに目を移すのだった。 買い物が終わり、家に帰るとさっそく袋を開けて生チョコを作り始めた。生チョコの分とトリュフの分とチョコを分けて作り始める。四苦八苦しながら作り始めて数時間。ついに生チョコとトリュフが完成。 あとはバレンタインデーに渡すだけとなった。 (2012/2/12) |