∴ 君に出逢ってしまった















ジャックはなまえが来る前に、と自分の部屋を片付けしている最中だった。机の上に広がっているプリントをまとめていると、ある一枚のプリントに目が入った。



「これって…」



入学して初めての席替えで隣になったなまえと授業中でのやりとりが書いてあった。当時、授業中に喋ることができなかったジャックが、プリントの裏になまえに向けて"暇だね"と書いて渡したのが事の始まりだった。そこにはぎこちない2人の変なやりとりが書いてあって、ジャックは思わず吹き出してしまった。



"暇だね"
"そうだね"
"何してるのー?"
"ノートとってるよ"
"真面目だねぇ"
"ジャックくんは不真面目だね"
"照れるなぁ"
"褒めてないんだけどな"



そんなやりとりがプリントの裏にびっしりと書いてあった。ジャックは片付けそっちのけで、プリントを食い入るように見つめる。

あの時、なまえと同じクラスじゃなかったら、隣の席にならなかったら、どうなってたんだろうな。

プリントに目を通しながらジャックは笑みを浮かべた。なまえが来たらこれを見せてあげよう、ジャックはそのプリントをベッドの上に置き途中だった片付けを再開したのだった。









(なまえ!見て見て!)
(ん?あぁ、これ…なんだジャックが持ってたの?)
(うん!て、僕が持ってちゃ駄目だった?)
(いやいや、たまにその時のこと思い出すんだよね。だから探してたんだけど、そっか、ジャックが持ってたんだ。)
(…これ、いる?)
(うーん、ジャックにも持っててもらいたいから…あ、じゃあ今からそれ写させて?)
(!じゃ、じゃあ僕の部分は僕が書く!)





最後の会話文にジャックは閃いたように書き出した。それを見たなまえは顔に熱が集まるのを感じながら、ペンを走らせた。


"ねぇ、なまえ。これからもずっと大好きだからね!"
"私もずっと大好きだよ"





(2012/1/29)
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