∴ どきどきあくしゅ











学校に入学して数日が経ったある日のこと。入学してからはずっと番号順に座っていたのだが、今日学校に慣れてきたということで席替えを行うことになった。男子は廊下に待機し、女子が先にどこに座るかを決める。女子が決まったら今度は女子が廊下に待機し、男子がどこに座るか決めて、決め終わったところで女子が教室に入り自分の席に座るという方法になった。
ジャックは昔からよく知っているキングとトレイの近くに座る。キングはジャックの後ろ、トレイはジャックの前の席に座った。ジャックは隣に座る女子は誰かな、と心を踊らせる。そしてクラサメの合図で女子が教室に入ってきた。



「キングーどんな子が座るか楽しみだねぇ」

「前向いてろ」



キングはジャックに手をひらひらと前を向くよう促す。前の席にいるトレイを見るとケイトが座っていた。ケイトはトレイの隣とか最悪…と呟いていたのをジャックは見逃さなかった。



「あの、」

「!」



ジャックのすぐ隣で声が聞こえたのでパッと横を向くと、自分の知らない女の子が立っていた。どこか怯えてるような素振りをしているのは気のせいだろうか。ジャックはニコリと笑い、キミが僕の隣?と言ったら彼女はうんと頷いた。



「僕はジャック、これからよろしくねぇ」

「なまえです、よろしく…」



目を合わそうとしないなまえにジャックは首を傾げた。席に座った後も縮こまってるような気がしてならなかった。そんな彼女にジャックは授業中ちらちらと視線を送っていると、それに気付いたのかなまえはジャックから顔を背けるのだった。

















「……おかしい」

「何がだ」

「隣のなまえって子」



ジャックはキングとトレイとリフレッシュルームで昼食をとっていた。フォークでスパゲッティをクルクルとするジャックにキングとトレイは珈琲を飲んでいた。どうやら2人は既に食べ終わったらしい。なまえという名前を出したジャックにトレイが思い出したかのように口を開いた。



「彼女、きっとジャックのことが恐いんじゃないですか?」

「えー?一応フレンドリーに挨拶したつもりなんだけどなぁ…」

「ジャックもキングも金髪で、しかも髪も上げているでしょう?大人しい女性なら恐いと感じても無理はありません」

「キングよりいかつい顔してないのになぁ」

「いかつくて悪かったな。もうお前には課題見せてやらないからな」

「ごめんなさいキング様はいかつくてとってもかっこいいですハンサムです素敵すぎます尊敬します!」



課題を見せてもらえなくなるなんて拷問だ。ジャックはキングの機嫌をとるためにキングを褒めちぎった。トレイはそれを見て深い溜め息をついた。

何とかキングに許してもらえたジャックは、ドラムの練習をするために教室に置いてあるバチを取りに行くと、なまえが席に座って本を読んでいた。真面目だなーと思いながら自分の席に行く。ふとなまえのほうへ目をやるとバチっとなまえと目があった。



「あ、」

「!」



目があった後、すぐサッと顔を俯かせるなまえにジャックはトレイの言っていたことを思い出した。

僕のこと恐いって思ってるのかな。



「…ねぇ」

「………なに?」

「僕のこと恐い?」

「え……ぜ、全然恐くないよ」



そう言っても目を合わそうとしないなまえにジャックはわからないように肩を落とした。ジャックはどうしようかと考えて考え抜いた結果、これからよろしくということで握手をしようと思い付いた。



「ね、握手しよ!」

「は、?」

「これからよろしくってことで、ね?」



笑みを浮かべて右手を差し出すジャックに、なまえは戸惑いながらも右手をジャックの手に重ねる。そのときなまえはジャックの目を見て少しだけ笑った。
そんななまえにジャックは胸の奥がキュウっと締め付けられた。



「………」

「……?」

「……あっ!ありがと!じゃ、じゃあ僕はこれで!」



なまえの返事を待たずにジャックはバチを手に教室から急いで出ていった。なんだ、なんなんだ今の、そんなことを思いながらジャックは廊下を駆け抜けるのだった。










(ジャックくんと握手しちゃった…!)
(今のなに…!?キュウってなに!?うわ、顔熱っ!)


(2012/1/29)
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