ナインと。










「ナインが教室にいるなんて珍しいな」


「……なぁエイト」


「ん?」


「俺、俺…どうしたらいいのかわかんねぇよコラァ」


「はぁ?」





0組教室。
珍しくナインが教室できちんと椅子に座って、何やら溜め息をついていた。
それが気になったエイトはナインに話しかけ、冒頭のようなことを言われた。
一体ナインに何があったのだろうか。





「女はよ、花ってのが好きなんだろ?」


「あ、あぁ…そうなんじゃないか(女?花?どういうことだ)」


「それでよぉ、墓地に咲いてた花を女にやったんだよ」


「ぼっ…!?(流石に墓地は不味いだろう!)」


「最初は嬉しそうにしててよ、んでどっから買ってきたのか聞いてきたから、墓地っつったらなぁんか微妙な顔になっちまってよ…」


「そ、そうか…(墓地から取ってきた花ならそんな反応されても仕方ないだろうな…)」





やけにしょんぼりしているナインに間違いを指摘できないエイト。
追い討ちをかけるようなことは言えなかった。
ナインのこの凹んでる雰囲気で。





「なぁ…俺、どうしたらいいんだよ…何喋ったらいいかわかんねぇし、喋り始めたら絶対咬むしよ…俺マジかっこわりぃ…」


「……(めちゃくちゃ凹んでるな…)て、手紙なんかはどうだ?」


「手紙…?」





ナインは身を乗り出してエイトに詰め寄る。
顔が必死すぎて怖い。

ナインは不器用ながらも好きになると一直線のため、何をしでかしてもナインに悪気は一切ないのだ。
取り合えずナインを落ち着かせ、無地の紙切れとペンを渡す。





「その紙にナインの想いを書けばいいんじゃないか?」


「俺の、想い…?」


「ああ、口で伝えられない想いをこの紙に書いて渡せば、相手にもそれがちゃんと伝わると思うんだ」


「………」





ナインは暫く紙を見つめ、何か閃いたのかペンを手に取り紙に何かを書き始めた。
エイトはその書いてる内容を見ないように、ナインの隣の席に座りそれを見守る。























ナインが静かにペンを置く。
ようやく書き終わったようだ。
ナインがこちらを見て、書き終わった達成感で満ちたのかどや顔を見せる。
エイトは手紙を一瞬だけ盗み見たら、紙には文字でいっぱいだった。

エイトは少し引いた。





「これならどうだ、オイ!」


「い、いいんじゃないか」


「おぉ、エイト、ありがとよ!早速渡しに行ってくるぜコラァ!」


「あ、ああ」





手紙を持って勢いよく出ていくナインに、大丈夫だろうか、と心配するエイトだった。































「ねぇ…またあの人、あんたのことめっちゃ見てるんだけど」


「え、ああ、」





ナインの想い人であるなまえはエントランスで友人と話していたら、物陰からこちらを覗き見しているナインを発見する。
ナインはどこかオロオロと落ち着かない様子で、こちらに来ようとしたりしなかったり。

先日、彼はなまえに花を送った。
しかも、墓地から摘み取ってきた花らしい。
なまえは受け取って何の花か聞いたら、墓地から摘み取った花と言われ一瞬迷ったが、ナインの真剣な顔に見とれてしまい何も言えず。

しかし彼の真剣な想いは意外なことになまえに少しずつ届いていた。



今回は何の用なのだろう、と友人と離れなまえから近寄る。
ナインと目が合うと、ナインは背筋を伸ばして固まった。
グシャッと音がしたのだが何の音なのだろうか。





「よ、よお!なまえ!」


「昨日ぶり、ナイン。今日はどうかしたの?」


「おおおう。その、な、」





ナインは顔を真っ赤にさせて、目を泳がせる。
なまえはナインをじっと見つめていると、いきなりナインはぐしゃぐしゃになった紙をなまえに押し付けた。





「え、」


「こ、これ、読め、コラァ!」


「あ、ちょっ」





紙を押し付けるとナインは走り去っていった。
なまえはぐしゃぐしゃになった紙を開いたらびっしり文字が書き綴られていた。

そのぐしゃぐしゃになった紙を読んだなまえは、顔を真っ赤にしナインを追い掛けたのだった。




























(ナイン…!)
(!)
(さ、最初の一行しか読めないんだけど…!)
(え゙)
(でででも、あ、ありがとう!返事、待ってて!)
(!お、おぉ!)







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