連載番外編












次の作戦まで暫く日にちが空く。
私はいつものように、クリスタリウムで本を読み漁っていた。
そしていつものように私の隣に座り、にこにこしながら自分を見つめるジャック。
最近は慣れてしまったのか、側にいても気にならなくなっていた。
ある意味進歩したと思う。





「ねぇー」


「…………」


「ねぇねぇー」


「…………」


「ねぇねぇねぇー」


「…………」


「ねぇねぇねぇねぇー」


「っうるさいな、なに!」





こいつは本当にしつこい。
きっと私が反応するまでずっとねぇねぇと言うだろう。
なんという諦めの悪さ。
時には引くことも大事というのを知らないのだろうか。
私は本から目を離し、ジャックを見る。
相変わらず嬉しそうな顔をして、何がそんなに嬉しいのだろう。





「当分さー任務ないよねぇ?」


「……まぁ、そうだね」


「ふふふー」


「…なに?」


「あのさぁ…僕とデェト、しない?」


「…………はぁ?」





突然何を言い出すのだこいつは。
デェト?デート?誰と誰が?
それとも新手のギャグかなんか?





「デェトって、デート?」


「それ以外に何があるのさぁ」


「冗談?」


「僕が今まで冗談言ったことあるー?」


「……ない」


「でっしょー!」





まさか今更デートの申し込みとはね。
案外冷静だな自分。
こう、もっとドキドキワクワクするもんだと思ってたけど。
あれ、私って女だよね。
あ、ああ、そういうことか。





「ジャックを意識してないってことか…」


「んなっ!意識してなかったの?!うっわ、僕すっごいショックー!」


「え、いや、ごめん…」


「こうなったらデートでもして、僕がいかにデキる男でちょーいい男か見せてあげるよ!」


「えっ…遠慮したいんですが」


「却下ぁ!」


「!うわわ、ちょ、本返しに…!」





強引に腕を引っ張られ、読んでいた本を慌てて掴みとる。
どうやらプライドが許さないらしい。
そりゃ意識してないと言ったのは悪かったが、いつもいつも私の近くにいるもんだから、意識のしようがないと思う。

だけどそのせいか知らないが、私までジャックが近くにいて当然だと思ってしまっている。
それはそれで改めないといけないのだが、なかなかこいつが私を一人にさせてくれないので改めるのは難しい。

そんなこと絶対ジャックには言わないけど。





「ちょーっと待った」


「!」





私の空いてる片方の腕を誰かが引っ張る。
もちろんその誰かというのは言わないでもわかる。
特徴的な声と私をよく知っている人物。





「ナギ…」


「2人してどこ行こうとしてんの?」


「ナギには関係ないじゃーん。僕となまえの邪魔しないでくれるー?」


「それは無理なお願いだな。俺もちょうどなまえに用事あるんだよ」


「用事…?なんか任務でも入ったの?」





未だに腕を離そうとしない2人。
しかもなんか睨み?あっている。笑顔で。
これはこれですごく不気味なんですけど。





「なまえ」


「ん?」


「俺と最近復興してきた町巡りに行かね?」


「はぁ?」


「だぁかぁらぁ、なまえは僕とデートしに行くんだってば」


「なまえがそれに承諾したのかよ?」


「したから行こうとしてるじゃんかぁ!」


「そうか?俺から見たら無理矢理連れて行こうと見えるんだけどなー」


「そんなことないってー!ねぇなまえ」


「え…」





そこで私に振るか!?
ジャックとナギは私を凝視してるし、え、これどうすればいいの?
私が答えなきゃ終わらない感じなの?





「なまえが困ってるだろ、つーか腕離せよ」


「ナギが先に離しなよー。さっき急に引っ張られてなまえ吃驚してたよ?」


「そりゃ悪かったな、でも腕は離さねぇよ。お前になまえをやるわけにはいかないからな」





バチバチバチ

そんな効果音がお似合いの2人にどうしたものかと頭を抱えた。
2人同時に腕を離せばいいじゃないか。





「そもそもナギはなまえの何なわけー?」


「幼馴染み兼仕事仲間兼大事な奴だよ。お前こそなまえに付きまとってるけど迷惑だとか考えたことないのか?」


「生憎なまえから迷惑だなんて言われたことないから。迷惑かけるようなことだってしてないしー」


「あのなぁ、なまえは優しいから迷惑だとか言わねぇんだよ。ジャックって空気読めねぇの?」





バチバチバチバチバチバチ


なんか言い合いがさらにヒートアップしているのですが。
ちょっと他の候補生からも変な目で見られてるから。
私が恥ずかしいってマジで。





「ね、ねぇ、ちょっと2人とも…」


「なまえは黙って(て)(ろ)」


「…………」





未だにあーだこーだ言い合っているジャックとナギに、さすがの私もキレかかるが突然背中から誰かに抱きつかれた。





「なまえ!」


「!ムツキ…」


「いじめられてるのか!?ボクがやっつけてやる!」


「む、ムツキ…!」





ムツキはゴソゴソと鞄を漁る。
私はチャンスだと言わんばかりに、2人に掴まれている腕を思いっきり振り払う。
離れた腕でムツキに抱き着く。
ムツキは吃驚してたが、鞄漁りをやめて抱き着き返してくる。





「あ、ちょ」


「お、おい」


「私はジャックともナギともどこにも行きません。ムツキとデートするから。それじゃあね!行こう、ムツキ」


「うん!…べー」





ムツキは呆気に取られてる2人に舌を出して、私と手を繋いでエントランスを出た。

全く仲良く言い合ってろっての。

























(………)
(………)
(あーあ、お前のせいでなまえが行っちまったじゃねぇか)
(なっ、僕のせいなの?ナギが邪魔さえしなかったら僕があの位置に立ってたのにー!)
(いいや、お前が潔く引けばこうには…)
(………)
(………)
(……はあ、僕リフレッシュルーム行こうっとー)
(俺も報告書書きに行くか…)







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