「貴方に元気がないと私も辛いです」



「いい加減付き合ったらどうですか?」
「へ?誰と?」
「なまえですよ」
「え」


休み時間にトレイとキングと他愛ない話をしていたら、突然トレイが溜め息をつきながら話を切り出した。
「付き合ったらって言われたって、僕はなまえのこと好きじゃないし…」と呟いたら、トレイとキングは眉を寄せて僕をじろりと見てきた。二人してなんだっていうんだ、と思いながら口を尖らせていると、キングがやれやれといった風に肩を落とした。


「お前自分でわかってないのか?」
「わかってないって何がさ」
「呆れますね全く…最近のジャックはなまえの話しかしてませんよ」
「え?……本当に?」
「無自覚か、なまえも報われないな」
「しかも、なまえの話してるときのジャックの顔といったらもう…」
「え!?なに!?僕の顔がなんだっていうの?!」


トレイとキングは憐れむような眼差しで僕を見る。
なまえの話ばっかりしていたっけ、そう思うあたりやっぱり無自覚だったんだと気付いた。でもなんでなまえの話ばっかりしてたんだろう。
あ、わかった、話題がないからだ!


「話題なんてなまえ以外にいくらでも作れるでしょう」
「むしろなまえ以外に話題がなかったら、お前いろいろと残念だぞ」
「な!何が残念なのさ!」
「つまらない男、ということですよ」
「つ、つまらない男……!」


つまらない男だなんて絶対嫌だ。これからはなまえ以外の話題を考えようそうしよう。
でもどうして僕はなまえのことばっかり話してたんだろう。きっとあれだ、なまえが側に居すぎるからなまえに気をとられてたから話題がなまえのことしかなかったんだ。
あれ?でもなんでなまえに気をとられてるんだろう?なんかおかしい気がする。


「こりゃまだまだ道のりは遠いな」
「本当困った人達ですね」


そう言うトレイとキングに、僕は意味がわからなかった。





あれからトレイとキングに言われたことが気になって仕方ない。悶々と悩みに悩んでいると背後から僕の名前を呼ぶ声がした。


「ジャック先輩!」
「おぅわっ?!」
「あれ、そんな脅かしたつもりじゃなかったんですけど」
「あ、あぁ、ごめん、考え事してた」
「考え事ですか?悩みなら聞きますよ?」
「あー今回は悩みとかじゃなくて」


きょとんとするなまえに胸がキュンとする。最近、なまえが僕に話しかけてくる度に胸がキュンとなるようになった。こそばゆくてむずむずする。
なんだろう、この感じ。


「………」
「……ジャック先輩?」
「え?あ、ごめん、たいしたことじゃないから。えーと、ちょい行くとこあるからまたね」
「あ、ちょ、あの、ジャック先輩!」


とにかくなまえから離れようとしたら、なまえが僕の名前を呼びながら手を掴んできた。
いきなり手を掴まれたせいなのか、反射的に手を振り払ってしまった。なまえは目を丸くして僕を見つめる。


「あっ…ご、ごめんね、えと、び、びっくりしちゃって…」
「わ、私のほうこそすみません…いきなり掴んじゃって、そりゃびっくりしますよね…」


苦笑いをするなまえの顔は、少しだけ怯えているような気がした。
僕となまえの間に重い空気が流れる。


「………」
「………」
「……あの、ジャック先輩」
「…ん?」
「ジャック先輩に元気がないと私も辛いです…」
「へ…」
「その、思い悩んでいたようなので…あんまり無理しないでくださいね。私に何かできることあったら遠慮なく言ってくださいね」


そう優しく言うなまえに、胸がギュウと締め付けられる感覚に襲われた。
この現象は一体なんなのだろう。
僕は頷いたあと、なまえから逃げるようにその場を後にした。




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