「何かあったら何でも言ってくださいね」




僕は悩んでいた。何に悩んでいるのかというと、今日のお昼ご飯をサンドイッチにするかオムライスにするか。気分はサンドイッチなんだけど、オムライスの匂いを嗅いだらオムライスも食べたくなってきた。かといってサンドイッチとオムライス両方を食べきる自信はない。

さて、どうしたものか。


「何悩んでるんですかー?」
「うわぁ…出たー」
「棒読みということはさして驚いてはいないみたいですね。何のお悩みですか?」


もういつどこでなまえが現れても驚かなくなっていた。それをなまえもわかっているようで、いつものようにニコニコしながら話しかけてきた。


「何のお悩みって…別にたいしたことじゃないんだけどね」
「たいしたことないなら悩む必要ないじゃないですか」
「はっ、確かに……いや僕にとってはたいしたことあって、なまえにとってはくだらないことなんだけど」
「ジャック先輩にとってたいしたことのある悩みなら、私にとってもたいしたことのある悩みですよ!良ければ相談に乗りますよ?」


なんだろう。最近なまえが良い子すぎて眩しい。ストーカー気味なのが少々ネックだけれど、こういうとき何となく頼りになる。
あれ?ていうかなまえって後輩だよね?なんで僕後輩を、しかも女の子を頼りにしてるんだろう。


「ほらほら、悩み事打ち明けてくださいよ」
「あ、はい。えーっと、オムライスを食べるか、サンドイッチを食べるか、迷ってて」
「そんなことで悩んでいたんですか?ジャック先輩、かわいいですね」
「かわっ?!……オホン、なまえ、かわいいなんて言われて喜ぶ男がいると思う?」
「いるんじゃないですかね。そこらへんに。それにジャック先輩はかわいいしカッコいいですよ!」
「……それ喜んで良いの?」
「胸張ってください!」


ドヤ顔で言うなまえに僕は呆れて肩を落とす。ていうか話逸れてるし。
はぁ、それにしてもどうしよう。


「あ」
「ん?」
「じゃあこうしましょう!」
「どうするの?」
「私はサンドイッチ頼むんで、ジャック先輩はオムライス頼めばいいじゃないですか。それで半分こしましょ?」
「え、いいの?」
「はい!」


いつものようなニコニコした顔で言うなまえに、またもやキュンとしてしまう。
なまえって案外気遣い上手だよなぁ、それによく気が付くし、顔もスタイルもそれなりに良いし年下っていうのも結構イケ…て何を考えてるんだ、僕ってば。
ちらりとなまえを見てみれば、いつの間に買ったのかサンドイッチとオムライスがテーブルの上に並んでいて、「買ってきました!」と笑顔で言い放つ。その無駄にある行動力も見習いたいものだ。


「あ、お金…」
「今日は私の奢りです!だから一緒に食べませんか?」
「い、いや、さすがに僕も払うって!」
「え、いいですよー!」
「僕が良くないから!一応これでも先輩だし!」
「えー…わかりました、じゃあ、ジャック先輩はサンドイッチの分の金額で」
「…なんか納得いかないんだけど」
「まぁまぁ、とりあえずご飯食べましょう?ね?」


どうして先輩である僕が後輩よりもお金を出さないのだろう。別に出せないわけではない。ただ、なまえが僕に譲ってくれないだけだ。
なまえに促されるまま、僕はスプーンを持ち、オムライスを食べ始める。
うん、やっぱりオムライスおいしい!
一方、なまえはサンドイッチに手をつけることなくニコニコした顔で僕を見つめていた。


「………」
「………」
「……あの」
「はい?」
「そんな見られてると、食べにくいんだけど…」
「あ、すみません!ジャック先輩に見とれてました!」
「………サンドイッチ食べないの?」
「残った分を食べますので、ジャック先輩は思う存分食べてください!」
「それじゃあお金払った意味ないんじゃ」
「意味ありますよ!こうしてジャック先輩とご飯食べれたし、それにジャック先輩のその嬉しそうな顔を見られただけで充分ですから!」


この子はどうしてこんなにも素直なんだろう。いや素直を通り越している気がする。言われたこっちが照れちゃうくらいだし。てか僕の嬉しそうな顔ってなんだよ…。
そんなこと言われるから、こっちも邪険にできないしむしろちょっと嬉しいんだけどさ。憎めないんだよね、本当。


「とりあえず、なまえも半分食べなさい」
「なんでですか?」
「僕の気が納まらないから」
「うーん…じゃ、アーンしてください!」
「えぇ?!そ、それはちょっと…」
「あ、アーンさせてあげましょうか?」
「はぁ?!え、遠慮します…」
「じゃあ思う存分食べてくださいね!」
「…わかりました…なまえ、ありがとね」
「どういたしまして、です!」


これじゃあどっちが年上かわからないなぁ。
そんなことを思いながらオムライスをまた一口食べると、なまえが僕を呼ぶ。


「んー?なーに?」
「また何かあったら遠慮なく言ってくださいね!」
「ん…なまえ」
「はい!」
「その発言、僕の前でしか言っちゃ駄目だからね」
「ジャック先輩にしか言いませんよ!なんでですか?」
「だってそれ、パシってくださいって言ってるようなものだから」
「ジャック先輩にならパシられたいです!」
「………」


目をキラキラ輝かせて言うなまえは、きっとアホに違いない。もし僕以外の誰かを好きになってたらと思うと…ああなんか想像したくないや。




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