ジャックの心情




最近なまえが僕に付きまとわなくなった。正確には7月27日からなんだけど。それまではしつこいくらい付きまとっていたなまえが、その日を境に姿を現さなくなった。



「………」



いつもよりだいぶ静かになった身の回りに、やっと落ち着けると思ったのだが逆に静か過ぎて違和感を感じてきていた。なんだ、この違和感。なまえがいないだけだというのに、この落ち着けない気持ちは一体なんなんだ。



「あ、ジャックじゃーん」
「!ケイトかぁ」
「何よそれ。はあーあ、なまえじゃなくて悪かったわね」
「えっ!?あ、いや、そういうつもりじゃ…」



ふぅん、と意味深に笑うケイトに僕は苦笑いをするしかなかった。話し掛けられたとき微かになまえの顔が思い浮かんだのは何故だろう。そんなことを思いながらケイトに何の用か訪ねた。



「そうそう、アンタってさーアクセサリーとか好き?」
「へ?アクセサリー?なんでー?」
「ちょっと気になってさー」



ま、アタシが気になってるわけじゃないんだけどね、とよくわからないことを付け足すケイトに、僕は首を傾げた。アクセサリーか、そうだなぁ…。



「んー…好きでも嫌いでもないよー」
「…好きでも嫌いでもないのか。じゃあ何が好きなわけ?」
「えぇ?どういうことー?」



いきなり何が好きかと聞かれましても、そんなパッと浮かんでくるはずがない。…いや、なんか変な奴が浮かんできたが気付かない振りをした。だってあり得ないもん。



「何が好きかなぁ…」
「自分の好きな物ないの?」
「だって突然言われてもねー」



僕は好きな物を思い浮かべようとする。しかし好きな物を思い浮かべようとするとアイツの顔がでしゃばってくるから、なかなか好きな物に辿り着けない。ほんと迷惑だよ。



「うーん…」
「……はぁ、もういいわ。ごめんね時間取っちゃって」
「えっいいの?」
「困るのはアタシじゃないからさ」
「…さっきから誰のこと言ってるのさ」



ジト目でケイトを見れば、ケイトはフッと鼻で笑って内緒、と呟きまたねぇと言って僕の前から去っていった。ケイトは一体誰のことを指していたんだろう。



「ん?ジャックじゃないか。こんなとこでボケッとしてどうしたんだ?」
「エース…僕ボケッとしてた?」
「ああ、かなり」
「………」



エースにそんなこと言われるなんて思いもしなかった僕は少し、いやかなり落ち込む。そんな僕をエースはきょとんとした顔で見つめていた。もしかして無意識か、タチが悪いなぁ。



(キラッ)
「!あ、れ?エース、その金のチョコボ、どしたの?」
「あぁ、これか?これなまえからもらったんだ」
「え」



エースの胸元にはキラキラ光る金のチョコボのキーホルダーがついていて、そんなものこの前まではついていなかったのに不思議に思って聞いてみた。そしたらなんとあのなまえからもらったとエースは言った。
ちょっと待って、え、なまえが、エースに?



「あ、あり得ない…」
「ここでこうして光ってるんだから有り得るだろ」
「えっ、でもなんでなまえがエースに!?」
「……さぁ、なんでだろうな?」



意地悪そうに笑うエースに僕は顔を引きつらせた。まさかなまえはエースのことが?あんなにも僕のこと好きだって言っておいて、エースのことが好き、なのか?



「………」
「あんまり気にするなよ、ジャック。じゃ僕は部屋帰るから」
「あ、うん…」



慰めるように肩を叩くエースに、僕の心はより一層モヤモヤするのだった。






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