誕生日まであと9日




少女S様はその名前の一文字目と同じようにSな人でした。1週間お昼ご飯を奢らないといけないなんて、とんだ災難だ。でもお金ならまだ大丈夫。カルラと一緒に商売した甲斐あってお金はたんまりと残っているから。
そして私は今日も少女S様のためにお昼ご飯を買いに行く。



「なまえ?」
「え?あ、あなたはセブ………」
「?」



名前を言いかける私に目の前の少女は首を傾げる。この少女とは言い難い人を、少女S2と呼んでいいものなのか、私は迷っていた。でも少女S2ではなくどう呼んだらいいか。少女S姐さん、いやこの人は少女とは言えない。それならばもうこの呼び方しかないだろう。



「…S姐さん!」
「は?」
「あ、あのですねS姐さんは少女っていうより姉貴って感じなのでそう呼ぶことにしました!」
「そ、そうか」



唖然とするS姐さんに、私は大きく返事をする。S姐さんは我に返ると困ったように笑い、口を開いた。



「それよりなんで弁当を2つも持っているんだ?2つも食べるのか?」
「いえ、これは少女S様にあげるやつです」
「少女S様?」
「サイスさんのことです」
「あぁ」



なるほど、と呟くS姐さんに私はハッとする。そういえばS姐さんにも聞いておかなければならないことがある。ジャックに何をプレゼントしたらいいか。S姐さんなら今まで聞いてきた人の中で一番まともな意見をくれるはずだ!



「S姐さん!」
「ん?」
「あの、ジャックに何をプレゼントすればいいですか?」
「ジャックに?あ、誕生日か」



さすがS姐さんだ。
私が思いっきり首を縦に振るとS姐さんは顎に手をあてて黙り込む。私はそれを静かに見守っていると、S姐さんの閉じていた口が開いた。



「…プレゼントよりも気持ちが大事なんじゃないか?」
「へ…」
「プレゼントも、気持ちがこもっていればあいつにも伝わると思うぞ」
「そ、そうかなぁ…」



曖昧な返事をする私にS姐さんは大丈夫さ、と微笑み私の頭を優しく撫でた。私はS姐さんのそういうところが大好きだ。私が男だったら確実に惚れているに違いない。
そんなS姐さんのアドバイスを否定するわけにもいかない私は、そうですよね!ありがとうございます!と言ってS姐さんと別れた。

ジャックの誕生日までもう時間がないぞ…残るは少年Eと少年N、そして少女Qと少年Kだ。少年N以外は期待ができそうだな、そう思いながら私は少女S様の弁当を届けに走り出すのだった。


ジャックの誕生日まであと9日!




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