短編 | ナノ
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寒い。
寒い寒い寒い寒い寒い。
「…寒いのか?」
「……見てわからないの」
教室の一番窓際。
一番日の当たる場所。
そこを陣取っている私。
膝を抱え込み、丸まっている私。
それを不思議そうに見詰めるエース。
なんでこんなに寒いのにそんな涼しい顔をしていられるのだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫そうに見える?」
「いや、見えないな」
「なら聞くなよ」
顎に手を当てるエースに、毒づく私。
ここでファイアでも唱えてやろうか。
教室を燃やしてしまおうか。
マジでやったら新手のテロになっちゃうな。
そしてクラサメ隊長の氷が降ってきそうだ。
仕方ない、命は惜しいのでやめておこう。
「リフレッシュルームに行けばいいじゃないか」
「人がわんさか居たよ」
「ならサロン」
「人がわんさか居たよ!」
何故今日はこんなに冷え込むのか。
白虎は毎日こんな寒い日を送っているのか。
尊敬しちゃうぜまったく。
「エースは寒くないの?」
「僕は別に、」
「体温高いのね…」
体温が高いなんて羨ましい限りだ。
私も体温高くならないかな。
「………」
「…?どしたの、エース」
エースはしばらく考え込んだ後、いきなり上着を脱いだ。
目が点になっている私の肩に、エースは自分の上着をかける。
「え!いやいやいや、エース寒いでしょ!?いいよ、大丈夫だよ」
「いや僕は大丈夫、仲間が風邪を引くなんて嫌だからな」
「いやいやいや、私ここ何年風邪引いたこと」
「いいから」
半ば無理矢理上着を肩にかけられる。
エースは言ったらなかなか諦めてくれないため、仕方なく私が折れる形となった。
私が大人しく上着を羽織っているとエースは満足そうに微笑んだ。
べっ別にドキッとなんかしてないもんね!
吃驚した、だけなんだから!