短編 | ナノ

深夜三時の攻防戦






明日は大事な会議が開かれる。それを知ってるはずなのに奴は空気も読まずにやってきた。



「………」
「………」
「………」
「狸寝入りは良くないぜ?」
「……なに?」



夜這いしてきたナギに私は眉間にシワを寄せて睨み付ける。さっきも言ったが明日は大事な大事な会議が開かれる。ナギもそのことは知っているはずで、どうしてこういう大事なときに夜這いしてくるのだろうか。いや、夜這いしてくること事態がおかしいのだけれど。



「いやー任務続きでさ、なまえが恋しくなっちゃって」
「明日の会議で会えるでしょ。今何時だと思ってんのさっさと帰れ」
「会えるのはわかってんだけどあんな堅苦しいとこだと、目も合わせてくれねぇじゃん」
「………」



だからなんだ。こんな状況で大事な会議中に目なんか合わせられるか。それに周囲に気付かれたくないのもある。



「俺が候補生で、なまえが武官だから?」
「………まぁ、そうだね」
「恋愛に身分なんか関係ねぇって言ったよな?」
「言ったけど、やっぱり気になるの」



ナギと私は所謂恋人同士で、その前に候補生と朱雀武官でもある。ナギには断ろうと思っていたが、まんまとナギの罠にかかってしまいこういう関係となってしまった。それでも後悔はしていない。



「まったく、なんで周りの目なんか気にすんのかなー」
「うっさいな、ほら明日の会議終われば一旦落ち着くんだからその後でも」
「やだね。俺は今がいいの」



ナギはニヤリと笑い、私の口に軽くキスをしてきた。久しぶりの感覚に、ジワリと体が熱くなる。いやいや取り乱されるな、と首を横に向けて一応時刻を確認する。時計の短針は3時を指していた。



「さ、3時…!?」
「え?今気付いたの?」
「会議7時からじゃん!寝る!寝かせて!」
「嫌だって言っただろ」
「寝坊したらまた局長に説教されるもん!」
「じゃ、このままオールナイトでも」
「昨日も寝てないのに!?」



服の中に手を突っ込もうとしているのを力の限り抑え込む。ナギはいかにも不機嫌そうな顔をして、諦めろっつーの、と呟いた。足はナギにのしかられてて動かない。両手でナギの腕を抑えていたら、今度は顔を近付かせてきた。



「まっ、て…!」
「……そんなにイヤ?」



慌てて片方の手で近付いてくるナギの顔を抑える。ナギの眉間が険しくなるのが見えた。



「イヤ、ではないけど……!?ぎゃあ!」



イヤではない、と言ったらいきなりナギは私の手を舐めてきて、パッとナギの顔から手を離す。ナギは不敵な笑みを浮かべていて、あぁもうだめだ、と思った午前3時30分。









深夜三時の攻防戦


「なまえ、会議中ですよ!欠伸ばかりしてだらしがない!」
「す、すみません…!(くそっ、ナギのバカ野郎…!)」



(2012/5/17)