短編 | ナノ

目には目を、歯には歯を






*同棲設定/現代/社会人
苦手な方はプラウザバック。






















寝室にて、ベッドの上に寝そべり読書をしていた。仕事が休みなナギも私の隣で横になっていて、二人してベッドに横になっていた。ふと日付付きの時計に目をやると、今日はエイプリルフールだと気付いた。ふーん、そうだったんだ、と思いつつ、ナギに嘘をついてやろうと考える。
ナギは隣でiPhoneを触っていた。



「ねーナギ」
「…んー?」
「この際だからぶっちゃけるけど…」
「?おう」



私はなるべくナギに悟られないように、と本を机の上に置く。ナギに背中を見せたまま、私は顔を俯かせた。



「……私、さぁ」
「うん」
「…前、浮気してたんだよね…」
「…へぇ」



短い返事をして、しばらく私たちの間に沈黙が走る。まさかマジにしてるのか?なんて少しだけワクワクしながら、私は未だ顔を俯かせていた。まだ、種明かしはしない。



「…なまえ」
「……なに」
「お前がぶっちゃけるんなら俺もぶっちゃけなきゃいけねぇよな」
「…なに、ぶっちゃけることって」



ナギはiPhoneを触るのをやめて、枕の上に置く。私は少しだけ振り返ると、ナギはベッドの上で正座をしていた。え?なんで正座なんかしてんの?吃驚した私はナギと向き合った。ナギは真剣な表情で私を真っ直ぐ見て口を開いた。



「…なまえ、怒らないで聞いてくれるか?」
「な、なに…そんな改まって…」
「つい一週間前、俺に連絡くれたよな?」
「え?あぁ…酔い潰れて連絡出なかったってやつ?」
「あぁ…あれは酔い潰れてたんじゃねぇんだ」
「は?」



つい一週間前、ナギは友人と飲みに行くと言って出ていった。それまではよかったが、0時を回っても連絡がこなかったので心配になって連絡してみたはいいものの、全く本人に繋がらなかった。結局、朝帰りしてきて、酔い潰れたから友人のキングの家に泊まったと言っていた。もちろんキングにもそれは教えてもらったし、ナギも心底反省していたので許してあげた。
それが一体、どうしたというのか。



「実は…女の家に泊まってた」
「……はぁ?それマジで言ってんの?」
「…すまん!!」



そう言うと勢いよく土下座をし出したナギに、頭の中が混乱した。まさか、ナギが浮気をしたなんて。キングまで私を騙していたなんて。確かに友人なんだから裏工作はいくらだって出来る。本当に、ナギは浮気したの?突然のカミングアウトに私は何を言ったらいいかわからなくなった。ナギは至って真剣な表情でしかも土下座までしている。この様子を見て、嘘だなんて考えられなかった。
私が何も言えないでいるとナギはポツリと溢す。



「…でもなまえも浮気、したんだよな…?」
「え゙」
「ならこれでお互い様ってことで」
「ちょ!待て待て待て!私は浮気なんかしてないって!」
「え?だって今、前に浮気したって」
「嘘!嘘だから!エイプリルフールだから!」



キョトンとするナギに私は必死で時計に指を指す。これでお互い様なんかじゃない。ナギのカミングアウトで私は沸々と怒りが込み上げてきた。ナギは怒っている私を見て、ニヤリと不敵に笑った。



「俺も嘘だけど」
「はぁ…?!」
「エイプリルフール、なんだろ?目には目を、歯には歯をってな。いやーまさかお前がそんな信じ込むとはなぁ…俺ってば役者になれるんじゃね?」
「!〜〜〜っ!」



余裕綽々として私を見るナギに言い様のない怒りと羞恥心が襲ってくる。そんなナギに向かって私は思いっきり枕を投げつけるしかなかった。





(だぁーいじょうぶだって!俺はなまえ一筋だから!)
(う、うそつけ!八方美人なくせに!)
(いやいやマジでなまえだけだって、愛してるんだぜこれでも)
(〜っせ、台詞が臭いんだっつの!バカ!)