短編 | ナノ

悪戯っ子には先手必勝







なまえはエイプリルフールということもあり、嘘をついても良い日な今日を思う存分楽しむことにした。ちなみに朝からエース、エイトを騙してきたところだった。








「エース!」
「!なまえか、今日は早いな」
「まぁねー、なんか冴えちゃってさ」
「そうなのか」
「……あのさ、エース」
「ん?」



チャック、開いてるよ。

そう囁くとエースは物凄い早さでズボンを見た。もちろんチャックなんて開いてるわけでもなく、エースは少しだけ頬を赤らめて顔を上げる。なまえを叱ろうと思ったが目の前にいたなまえはいつの間にか消えていた。エースはやられた、と頭を抱えたのだった。





味をしめたなまえは次にエイトの後ろ姿が目に入った。エイトには何を仕掛けてやろう、と頭を捻らせる。
そうだ!



「エイトー!」
「ん?なまえか、今日は早いんだな」
「冴えちゃってさー。それよりもエイト、今日はいつもより調子良いね!」
「?何がだ?」
「頭!すごいハネてるよ!」



そう言うとエイトは片手で髪の毛を触った。エース同様、少しだけ頬が赤い。なまえは鏡見てきたら?と言うとエイトは素直にそうだな、と言って鏡のある男子トイレまで走っていった。鏡を見たエイトはまったくハネていない髪の毛を見て、溜め息を漏らした。








この二件によってさらに味をしめたなまえはまた誰かを探し始める。ケイトなんかは簡単に引っ掛かりそうだ。シンクは案外鋭いし、セブンやサイスは今日のことわかってそうだなぁ。そんなことを考えていると、なまえは誰かに肩を叩かれた。



「!」
「なまえ?何してんのー?」
「え、」



ジャックか、と呟くと同時に身体が熱くなった。ジャックはニッコリ笑ったまま、珍しいねぇ、と口を開く。なまえは目を泳がせながら口をもごもごとさせた。



「じゃ、ジャックも早いじゃん!今日はどうしたの?」
「んー今日は僕ねぇ、大事な話があるから気合い入れて早く起きたんだー」
「そ、そうなんだ…」



いきなり現れたジャックになまえは完全に混乱していた。もちろんジャックにだって嘘をつこうと思っていたのに、まさか不意をつかれるとは思いもしなかったようだった。



「だだ、大事な話って?」
「へへー内緒だよー」
「………」



そんなこと言われると余計に気になるじゃないか。

なまえはジャックの言う大事な話が気になって仕方なかった。ジャックは両手を頭の後ろに組んで、キョロキョロと顔を動かしていた。大事な話をする人を探しているのだろうか。というか大事な話ってどんな話なのだろう。まさかこ、告白、とか…?



「……気になるー?」
「!?べ、別に…」
「あはは、めちゃくちゃ気にしてるでしょー。顔に出てるよー」
「え!?」



慌てて顔を背けるなまえに、ジャックは楽しそうに笑った。いや、まて、顔に出てるわけがない、そう冷静になったなまえはジャックにバレないように深呼吸をする。



「なまえ」
「…ん?」
「知りたい?」
「え」
「大事な話の内容」



顔を覗き込んでくるジャックになまえは目を丸くさせた。大事な話の内容を教えてくれるなんて、確かに気にはなるけど大事な話なのに私なんかに言っていいのだろうか。
なまえは悩んだ末、ひとつ頷く。それを確認したジャックはにやぁと、そんな効果音がしそうな笑みを浮かべた。



「あのね、僕…」
「う、うん…」
「好きなんだ」
「……え?」
「なまえが!」



そう言うとジャックはガバッとなまえに抱き着いた。突然のことに状況を把握できないなまえは呆然とするしかなかった。
今、ジャックは何と?



「なまえ?」
「………」
「………」
「……え?」



目を真ん丸くさせて至近距離にいるジャックと目を合わせる。なまえはやっと状況を把握できたのか、ボボボと一気に顔が真っ赤になった。



「え…え、と」
「(うーん…わかってはいたけど、こんなになるとはなぁ…)……なまえ」
「え!?あ、はい?!」



茹で上がったタコみたいに真っ赤になってしまっているなまえに、ジャックは苦笑しながら口を開く。



「今日、何の日だっけ?」
「え…………あ」



そう言われてやっと今日がエイプリルフールだと気付いたなまえは、ジャックの顔をまともに見れなくなり両手で顔を覆った。ジャックの腕が緩むと同時になまえはジャックを突き飛ばし、どこかへ走っていったのだった。










(あちゃー…からかったつもりだったんだけどなぁ……別の日にちゃんと告白しなきゃねぇ)

(エース、エイトごめんなさい!!!)
(え?)
(ど、どうしたんだ急に…)
(本当にごめんなさい!!)
((顔真っ赤…))