短編 | ナノ

キングと尻(3)





「なまえさ、キングのお尻以外はどう思うの?」
「へ」



ケイトさんとリフレッシュルームにて昼食をとっていると、ケイトさんがスパゲッティを頬張りながら質問してきました。
私はケイトさんと同じスパゲッティをフォークでクルクルと巻きながらキングさんのことを思い浮かべる。
キングさんを思い浮かべるとすぐお尻に目がいっちゃう私はもう末期かもしれません。



「キングさんのお尻…以外ですか。考えたことありませんでした」
「はぁ!?考えたことないってあんたねぇ…」



ケイトさんは肩をがっくりと落としてフォークを持っていないほうで頭を抑える。

そうですね…キングさんを最初に見たときはいかついお兄さんだなぁ、と思いました。

そうケイトさんに言うと、それで?とケイトさんは興味無さそうでした。



「いかついお兄さんで、えーとムツキ知ってますか?」
「あぁ、被害妄想の子ね」
「そうです。それでムツキにキングさんのこと聞いたんですけど、キングさん見かけによらず面倒見がいいって聞きました」
「…ふーん」
「ある時、0組の教室に向かうキングさんを見つけたので、少しだけ観察してたんです。それでその後ろ姿を見たら」
「もういいわかった、あー…なんていうか時間の無駄だったわ」



ケイトさんは深い溜め息をついて、水を飲み干す。
そうですよね、私の話なんて時間の無駄ですよね。
その時キングさんに一目惚れしたなんて、ケイトさんには興味ないですよね。

私は残りのスパゲッティを口に入れようとしたら、ケイトさんがむせて両手で口を押さえてました。



「ごほっごほっ!ちょ、あんた、今、なんて!?」
「?そうですよね、私の話なんて時間の無駄ですよね…ですか?」
「そ、そのあと!」
「その時キングさんに一目惚れしたなんて、」
「そう、そこ!」



ケイトさんは苦しそうな表情で私に指をさしました。
指をさすなんて失礼な、と少しだけムッとしてしまいケイトさんの手を払いのけます。



「ひとつ聞くけど、キングに一目惚れしたって…お尻のほうじゃないよね?」
「お尻が一番ですけど、お尻を含めてキングさんを好きになったんです」
「お尻は一番なのか…いやまぁそれでもいいよね、うん」



ぶつぶつと独り言を呟くケイトさんに若干引いてしまいましたけど、私はケイトさんのためにも言わないでおきます。
それにしても、私がキングさんを好きになってはいけなかったんでしょうか。



「これは知らせないとね…」
「キングさんももう知ってると思いますよ」
「は?!あんたもう告白したの?!」
「告白ってほどでもない気がしますけど…」



あなたのお尻が好きなので触らせてください!と言っただけなんですが、これは告白のうちに入るんでしょうか。
ケイトさんはさっきから驚いたりニヤついたりしていて気持ち悪いんですけど…。



「それで、キングから返事はもらったの?」
「?えぇ…断る、と言われましたよ」
「なっ…あ、あんた…!」



何故か哀れみの目を向けてくるケイトさんに、尻爆弾を投げつけたくなりましたが我慢します。
でも私は諦めませんよ、と言うとケイトさんは真剣な顔をして、アタシも手伝ってあげるからね!とこれからの意気込みを語ってくれました。
お願いします、と言ったのはいいんですが、あんなにイヤだと言っていたキングさんのお尻触ろう作戦に協力してくれるなんて、ケイトさん心変わりでもしたんですかね。





(キング、アタシはなまえの味方なんだからね!)
(は?……ちょっと待て、俺の味方はいないのか?)
(キングには同情するけどさぁ…もう大人しく捕まっちゃいなよー)
(わりぃなキング、俺もあいつだけは敵に回したくねぇ)
(私も一応止めには入るが…あまり期待するなよ)
(もう大人しくなまえに尻触らせてあげろって!いい武器造ってくれるかもしれねぶっくくく…)
(僕もなまえに興味あるからキングの味方にはなれないかな)
(わ、わたくしはキングの味方ですが…!お、お尻の件、本当にすみませんでした…!)
(…………)