「さっむ…」
部活にクリスマスなんてものはない。
そう、クリスマスの日もいつもと同じ部活で半日が潰れてしまった。
それはそれで構わない。
私には彼氏というものはいないから。
それにしても今日の部活は一段と人が居なかった。
皆仮病を使い、今頃彼氏や友達とワイワイクリスマスを楽しんでいるのだろう。
真面目に部活に出ている自分が馬鹿馬鹿しくなってくる。
しかもこういうときに限って鍵当番だし。
最後の1人が部室を出ていくのを確認し、部室に鍵をかける。
後は職員室に鍵を持っていくだけだ。
「…はぁ」
1人寂しく職員室に向かう途中思わず溜め息が漏れる。
家に帰っても何もすることもないしどうしようかな、と考えていると後ろからバタバタと走る音がした。
「?」
気になって後ろを振り返ったらジャックがこちらに向かって走っていた。
しかも笑顔付きで。
さすがに笑顔で走っている姿は気持ち悪い。
「あーよかった、まだ帰ってなくて」
「鍵当番だからね…ジャックはどうしたの?」
息一つ乱れていないジャックに相当運動能力が高いんだなと感心した。
こいつとはクラスは同じだけど、面と向かって喋るのは初めてな気がする。
「あのさぁ、これから暇?」
「……なんで?」
「いやぁ、僕も暇だからさぁー……暇なら僕と一緒に食事なんてどうかなぁなんて…」
その発言に目が飛び出るかと思った。
ジャックはかっこいいグループの中の1人でいつも女子たちに言い寄られていた。
そんなジャックがまさか私を食事に誘うなんて何事かと思ってしまう。
「…急になに?なんかの罰ゲーム?」
「んなっ!そんなわけないじゃん、僕は至って真剣なんだけどなぁ…」
「いやだってジャックが私を誘うなんてあり得ないし」
「今この状況であり得ないなんて言えますかー?」
「………」
そんなアホな。
罰ゲームかなんかじゃないのか。
いつもならキングとトレイと悪ふざけしてるジャックに、こんなこと罰ゲーム以外の何物でもないだろうと突っ込みたかった。
「で、オッケーなの?」
「……1つだけ聞かせて。…なんで私なの?」
それを言うとジャックはわざとらしく深い溜め息を吐いた。
そして呆れながらも口を開く。
「それぐらい自分で考えなよー」
「えぇ…私以外でもいいじゃん」
「……あーもー!僕はキミと行きたいの!キミがいいんだよ!」
「!」
ジャックの頬は僅かに赤みがかっていて、つられて私まで顔に熱が集まるのを感じた。
それからジャックはガシガシと頭を掻いて、私に背中を向ける。
「かっ、鞄取ってくるから、先帰るなよ!」
「あ、ちょ…」
物凄い速さで廊下を駆けていくジャックに少し笑ってしまった。
ジャックからの思わぬ告白に、今日真面目に部活に来て良かったな、と思ったのだった。
メリークリスマス!