短編 | ナノ

ジャックとX'mas




「……最悪」



クリスマスだというのに風邪をこじらせてしまった。
彼氏のジャックは怒るだろうか、はたまた呆れてしまうのだろうか、とにかくクリスマスというイベントに風邪をこじらせるなんてアホだろ自分。
しかも先日マザーに診てもらったばかりなのに。
そんな診てもらってすぐに風邪ごじらせるなんて私自身思いもしなかった。
今日はこんな状態で授業にも出られないので大人しく自室で休むことにした。



──ピピッ



ベッドの中でジャックにどう言おうか悩みに悩んでいると何故か無線から連絡が入った。
こんな時に任務とかだったら勘弁してくれよ、と思いながらも無線に出る。



「…はい…」

──なまえ〜…

「ジャック?!ど、どしたの」

──僕死にそう〜…助けて〜…

「え、死にそうって…ちょ、ジャック!」



ブツッと切れる無線に私は慌ててカーディガンを羽織り自室を出る。
身体はダルいし頭は痛いけど、ジャックのほうが心配だ。
本当ジャックに甘いな自分。



──コンコン



「ジャック?開けるよ?」



部屋の中からは何も聞こえなかったので私は勝手にジャックの部屋へと入る。
ジャックはベッドの中に丸まっていて気の抜けた笑顔で私を出迎えてくれた。



「待ってたよぉなまえ〜」

「ジャック顔あかっ!ちょ、熱計って!」

「ん〜…なまえこっち来てよぉ」

「先に熱はかっうわ!」



ジャックに腕を引っ張られベッドの上に倒れてしまう。
ジャックはモソモソと私を布団の中へと引き摺り込む。
ギュウッと抱き締められ仕方なくなすがままになってみた。



「なまえあったかぁい」

「…そりゃ私も風邪引いてるから」

「なまえも風邪引いたのぉ?ふふオソロだねぇ」

「まぁ、そうだね…」



風邪のせいだからかいつもよりもっと甘えんぼになっているジャックに私は小さく肩を落とした。
ああ、そういえばクリスマス。



「ジャック、?」

「ん、クリスマスこんな形になっちゃったけど、僕は満足だなぁ」

「へ、」

「一緒に風邪引くなんてラッキーって思うよぉ、どっちかが風邪引いてなかったら気遣うもんねぇ」

「………」



まぁ確かにどっちかが風邪引いてなかったら気遣うよね。
クリスマス、一緒に過ごせなかったよね。
それはそれでこんな形になっちゃったけど、こんなクリスマスもいい気がする。
ジャックは私の額にキスをする。



「なまえのおでこ熱い〜」

「熱あるもん」

「…なぁんかムラムラしてき」

「アホかっ」



手がジャックに掴まれて使えないためジャックの顎付近に頭突きをかます。
冗談だよ〜と言う割にジャックの手は私のお尻を優しく撫でている。



「やめなさいっ」

「いいじゃん撫でるくらい」

「そういう問題じゃありません」

「なまえ、クイーンみたい〜」



クスクス笑うジャックに何も言えなくなってしまう。
私は本当ジャックに弱いんだなと改めて実感する。
お尻を撫でる手は止まらないしジャックはさっきまでトロンとしていた目が今はギラギラしているような気がするし、私の頭の中で警鐘が鳴る。



「じゃ、ジャック…?」

「んー?」

「この手は何かな?」

「僕の手ー」

「…何してるのかな?」

「なまえの胸揉んでるー…柔らかーい」

「そうだね、てやらないよ?!風邪もっと酷くなっちゃうから!」

「なまえと一緒なら酷くなってもいいかもぉ」

「よ、良くないっての!」



これ以上酷くなったら0組の皆に迷惑がかかってしまう。
まだ戦争中だと言うのに風邪ごときで休みまくってしまったら皆に申し訳ない。
エスカレートしそうなジャックに私はない頭を必死に働かせ、取り合えず落ち着けさせようと試みる。



「ジャック、私風邪酷くなりたくないよ」

「えーなんでぇ?授業も休めるよぉ」

「休んだ分皆に迷惑かかるでしょ?」

「だぁいじょーぶだってぇ」

「こ、こら、服捲るな!」



駄目だスイッチが完全に入ったらしい。
風邪で身体弱ってるくせにこういうときは元気になるんだな、というか本当にジャックは風邪引いてるのか?



「ふふ、気持ちいー」

「う…や、マジでジャックさん勘弁して」

「もう無理〜」

「…っちょ、ね、ねぇジャック!」



まだなんかあるのぉ、と言いたげな表情で私を覗く。
私はジャックの気をそらしながら少しずつ服を直す。



「ぷ、プレゼント!そう、私プレゼントあるんだ!」

「えっ!本当に?」

「うん、だから持ってきてあげ」

「プレゼントは後でもいいよぉ、先になまえからいただくから」

「くっ…!」

「ほらぁ、もうそろそろ諦めなよ、ね?」



不敵に笑うジャックに私はとうとう諦めるしかなかった。
ああ、後でマザーにまた薬もらいに行かなきゃなと思いながら、ジャックにおいしく頂かれてしまったのだった。



(かわい、なまえ)
(うぅ…ジャックのばかもん!)
(なまえも嬉しそうに喘いで)
(言うなぁぁあ!)
(……ねぇプレゼントって何?)
(…べ、ベルトだけど)
(!僕欲しかったんだよね、新しいベルト!ありがとうなまえ〜!)
(き、気に入るかどうかわかんないけど…)
(僕はねーこれっ)
(…ネックレス?)
(いつでもどこでも僕と一緒だよってことで)
(あ、ありがとう…!)
(じゃあプレゼント交換も終わったことだし)
(……え)
(もう一回戦〜)
(えぇぇ!ちょ、まっ!んっ…)


次の日、やっぱり風邪が酷くなりました。
マザーから絶対安静をくらい、私は無線の電源をオフにしベッドに潜り込む。
これから絶対クリスマスに風邪を引かないということを肝に命じて、今日こそゆっくり休むと決めたのだった。

メリー クリスマス !