短編 | ナノ
ナギとX'mas
世間はクリスマス。
なのに私はバイトです。
いや別に彼氏もいないし?好きな人はいるけど進展ないし?もういいんだ今年は1人でクリスマスを迎えるんだ家帰ってコンビニで買ったケーキ食いながらノンアルコールのシャンパンでやけ酒すっかなあはははは。
ちなみに好きな人は一緒のバイト先のナギさん。
あの人ちょーかっこいいから絶対彼女いるんだろうなあ、私なんてアリンコにしか見えないんだろうなあ。
男にも女にも人気だし気さくでいい人だしたまに調子良いとこあるけど面倒見もいいし。
「はーあ…」
「おいおい、溜め息なんか吐いてっと幸せ逃げちまうぜー?」
「うぉうっ!なななナギさん!」
「なんだよ、なんか悩みでもあんのか?俺でよかったら聞くぜ?」
「めめ滅相もございません!」
「はは、なーに堅くなってんだよ」
爽やかスマイルのナギさんいただきました。
とてもかっこいいですハイ。
つーか接客しなくていいのか。
あ、私盛り付け担当です。
「ああ、接客なら大丈夫。今落ち着いたとこだし」
「え、そうなんですか」
「おう。で、悩み事あんなら聞くぜ?」
「なっ悩み事ってほどじゃあないんですけどね」
苦笑いでその場を乗り切ろうとするがナギさんの洞察力には逃げ切れなかった。
悩み事の種があなただと知れたら私恥ずかしくて死ねます。
「そっ、それにしても今日は暇ですね!」
「話そらすなっつーの。ま、クリスマスだしそんなもんじゃね?」
「いいですねークリスマス。私なんて予定真っ白ですよ!バイトが恋人みたいだなー」
なんちゃって。
バイトが恋人だなんて変なこと言い出す私にナギさん絶対こいつおかしいとか思ってるんだろうなうわああ失敗した…!
なんでここでナギさんの予定を聞けなかったんだ、最大のミスだ。
いやでもナギさんの口から彼女と過ごすだなんて言われたら泣いてしまうかも。
ちらりと盗み見ればナギさんは相変わらずにこにこ?にやにや?していて何を考えているのかさっぱりわからない。
「へぇ、なまえは1人で過ごすのか」
「いっいけないですか。しょうがないじゃないですか、相手がいないわけだし」
「誰も誘わねぇの?」
「皆予定があるって断られましたけど!」
グサグサと傷をえぐっていくナギさん。
こんなとこでドSを出さなくていいですよ、私挫けちゃいますって。
それでも相手にしてもらえてるだけ十分だけどね!これで相手にもされなかったらそれこそ寂しいクリスマスになってたからね!
「なまえの家の親は?パーティとかしないの?」
「もうそんな年じゃないですから。パーティなんてやるわけないですよ」
「ふーん」
「な、ナギさんこそクリスマスは予定ないんですか」
「この通りバイトやってるけど」
「〜〜っそういう予定じゃなくて、このあとバイト終わったらか、彼女さんとどこか行くんですか」
「彼女?俺彼女なんていないぜ」
「!」
うわあああ勇気振り絞ってよかったああ!
ナギさんに彼女はなし、と。
いやでももしかしたら好きな人がいるかもしれないよね。
ああどうしよう好きな人とかいたら失恋決定じゃん!
「まぁこれから彼女できる予定だけどな!」
「えっ」
「ナギとなまえちゃん上がっていいよー」
「はいよー、じゃお先ー」
「おっお疲れ様です…」
彼女できる予定…そうかナギさん今から告白しに行くんだ。
いいなあ、ナギさんから告白されたら絶対断るわけないじゃん。
せっかく彼女いないって聞いて舞い上がってたのに、すぐにドン底に突き落とされたよ、本当にドSだナギさん。
かなり凹んだ私は制服から私服に着替えるまで15分かかった。
それくらいショックだった。
帰り、コンビニ寄ってケーキでも買おう。
そう思って裏口を通って外に出たら温かい物が頬に当たった。
いや温かいじゃなくてかなり熱い物だった。
「あっづ!?」
「ぶはっ何その間抜けな声!つーかしけた顔してんなー」
「ななな!?」
「ちゃんと名前言えって」
「ナギ、さん!」
マフラーに顔を半分埋めたナギさんが裏口出たすぐのところに立っていた。
手にはココアとコーヒーの缶を持ってて、私の頬に当たった熱い物はこの缶のせいだったのか。
「ほらよ、お疲れさん」
「え…」
「コーヒーは俺のな。ココア嫌だったか?」
「あ、いえ、ありがとうございます…」
慌ててココアを受け取る。
どうしてナギさんがいるのだろうか。
好きな人のところに行ったはずなのでは?
私の頭の中は真っ白だった。
「うーさっみー」
「……ナギさん、こっち私の家の方面ですよ?」
「あ、気にすんなって。俺もこっちに用があんだから」
「…そうですか」
なんだなんだ、好きな人とやらは私の家の方面のほうにいるのか。
少し、いや凄い迷惑な話だ。
さっさと告白しにいけばいいのに。
「………」
「……ぷっ」
「……なんで笑ってるんですか」
「いやー面白いなーって思って」
「どこがですか」
人の気も知らないで。
そう思ってもナギさんが隣にいるだけで緊張して、何話したらいいかわかんないしどう対応すればいいのかもさっぱりだった。
ナギさんは相変わらずにやにやしてるし。
「…私なんかに構ってないで早く告白しに行けばいいじゃないですか」
「まぁまぁそう焦んなって」
「………」
「いやいやそんな見つめられても何も出ないぜ?」
「睨み付けてるんですけど」
駄目だ。
ナギさんには敵いそうにない。
失恋決定か、バイトでナギさん見る度に悲しくなるな。
でも今のバイトやめたくないし、ナギさんいるし。
彼女できてもナギさんのこと諦められそうにないな、あー自分アホだな嫌になっちゃうな。
もはやプラス思考なんて考えられなかった。
「これから彼女できるってーのがそんなに気になる?」
「…別に、よかったですね。ナギさんが告白したら相手絶対断らないですよ」
「そっかなぁ…お前はそう思うんだな?」
「…思いますよ」
だってナギさんだし。
ナギさんに想われる人が羨ましい、私もいつか好きな人に想われたいなーそんな人現れるかどうかだけどね、というか当分「じゃあ断るなよー」ナギさんのこと引き摺るだろうし………て、え?
「………え、?今、何と?」
「断るなよって」
「……………え、どういうことでしょうか」
「お前本当はわかってるんだろ」
よーしじゃあコンビニでケーキ買って俺ん家でパーティすっかぁ、と伸びをしながら言うナギさんに私は急に恥ずかしくなってマフラーに顔を埋めるのだった。
メリー
クリスマス!
(なな、ナギさん!)
(ん?)
(これから彼女できる予定って…!?)
(なまえ分かりやすすぎ)
(……うぇ)
(なっなんで泣きそうになるんだよ!)
(あっ諦めかけて、たからですよっ)
(あーごめんごめん!面白かったからつい)
(ナギさんのドS!)
(なまえが好きだからついいじめたくなるんだよ)
(!!)
(ぶっ!かわいーなお前)