短編 | ナノ
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町に着くと辺りは炎に包まれていた。
焦げ臭いし煙で視界は悪いしで最悪な状態だった。
ナインはどこに行ってしまったのだろうか、0組は町の中を走りながら探す。
走っている途中に何人かの候補生の亡骸が目に入る。
ナインの想い人は無事だろうか、そしてナインも1人で突っ走って行ってしまって大丈夫だろうか。
0組はハラハラしながら先に進んだ。
「こちらです…!急いで!」
彼女はまだ無事だった。
民間人を救出する任務に変更されたため、皇国兵の目を掻い潜って民間人の保護に徹してした。
自分以外の候補生は無事だろうか。
民間人の誘導をしながら他の候補生の心配をする。
とにかく今は皇国兵に見付かる前にいち早く民間人を安全な場所へ移さなければ。
「ここにいたぞー!」
「!」
皇国兵の声が後ろから聞こえ振り返ると2、3人の皇国兵がこちらに向かって銃を構えていた。
慌ててウォールを張ろうと魔法を唱えるが間に合いそうにない。
もうだめだ、と目を瞑ったその時だった。
「オラァァアア!」
「!」
「うがっぁぁあ!」
「ぎゃぁぁああ!」
あの人の声がしたと思って顔を上げたら、槍を振り回して皇国兵を次々に倒していくナインの姿があった。
呆気に取られていると、皇国兵を倒し終わったナインが駆け寄ってきてすごい心配そうに大丈夫かと彼女に声をかけた。
「あ、だ、大丈夫、」
「そっか…!あー間に合ってよかったぜオイ」
「あ、ありがとう…!」
彼女は涙を溜めてナインを見上げた。
それを見たナインは一瞬固まりそれから顔をすぐに彼女から背けた。
ナインの顔は茹で蛸のように赤かった。
「れ、礼には及ばねぇよコラァ…!」
「ナインさんが来てくれなかったら死んでました…本当にありがとうございます」
「もう大丈夫だからな!俺が付いてっからよ!チョコボに乗ったつもりで任せろコラァ!」
「ナイン、チョコボに乗ったつもりではなく、大船に乗ったつもりですよ」
「と、トレイ…!?と、お前ら…」
「全く1人で突っ走るなんて、よっぽど彼女が心配だったんだな」
「え、」
「エイト!言うんじゃねぇよコラァ!」
「でも事実じゃない」
「ケ、ケイトてめぇ…!」
「あんな必死なナインさん見たことありませんでしたよね!」
「おいナイン、顔真っ赤だぞ」
「あははー彼女も真っ赤になってるよぉ」
「なんかお似合いだな」
「「………」」
あの後、0組は無事残りの民間人の保護と皇国兵の殲滅の任務に成功したのだった。
「あれ、ナインと…」
「ふふ、仲良さそうにご飯食べてますね」
「ナインったらデレデレしちゃってさー」
「あの子もナインにデレデレしてるっぽいよねぇ〜」
「ぽいじゃなくてしてるね確実に」
「そういえば彼女、今度から0組に異動することになったそうですよ」
「そうなのか…ナイン、喜ぶだろうな」
「あの顔がもっとデレデレすんのかよ。気持ち悪いな」
「いいじゃないですか。幸せそうですしね」
「こ、今度、助けてくれたお礼にってこの間助けた民間人の方々がパーティーに招待してくれたんですが…!」
「おぉ、よかったなオイ」
「なっ、ナインさんも、どうですか!?」
「!い、いいのかよ俺なんかで…!」
「ナインさんが良いんです!」
「!」
「め、迷惑でしたか…?」
「めっ迷惑なわけねぇだろがコラァ!い、行こうぜその、パーティーに」
「!ありがとうございます!」
〜fin〜