梅雨も明け、朱雀の季節は夏となり、魔導院も夏休みに入った。
寮生活である候補生たちは夏休み中に家に帰れるけれど、エースたちは家に帰らず教室や裏庭で談笑していた。
そんな中、ジャックとなまえは裏庭でナインたちがわいわい騒いでいるのをベンチに座って見つめていた。


「いやぁ、夏休みっていいよねぇ」
「そうだねー」
「寝坊できるし、授業ないし、誰にもなにも言われないもん」
「課題やりなさい、てトレイとクイーンが言ってたよ?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。なんとかなるってー」


けらけら笑うジャックになまえは呆れる。ナインがホースを持って水遊びし始めた。ケイトとシンクがナインから水をかけられ、ケイトは怒りシンクは笑っている。それを見ながら、なまえは不意にぽつりと呟いた。


「このまま、ずっとみんなといたいなぁ」
「?、なまえ?いきなりどしたの?」


なまえの呟きにジャックは首を傾げて、なまえの顔を覗き込む。なまえはナインたちのほうをじっと見つめていた。


「なまえー?」
「んー、ねぇジャック、大人になってもみんな一緒だよね?」
「へ?」
「ずっと、ずーっとみんなとわいわいしてたいなぁ」


なまえは寂しそうにそう口にする。ジャックはそんななまえをじっと見つめながら、少しだけ考えていると、ジャックの肩になまえがもたれかかった。
急にもたれかかってきたなまえにジャックは目を丸くさせる。


「ねージャックー、大人になったらみんなバラバラになっちゃう?」
「えぇ?ほんとどうしたの急に」
「んーなんとなく」


目線はいたって真っ直ぐで、ジャックもなまえの目線の先に目を移す。 ナインからホースを奪ったケイトが得意げな表情で斜め上へ水を飛ばした。そこに綺麗な虹がかかる。それを見てナインがおぉーと声を上げていた。
虹なんて珍しくもなんともないのに、とジャックは苦笑を浮かべながら、口を開いた。


「ねぇなまえ、大人になるなんてずっと先のことじゃん。未来のことを考えるよりも今を楽しめばいいと思うけどなぁ」
「そう…だけど、つい考えちゃうの」
「…そっかぁ」


そう言いながらジャックもなまえにもたれかかる。
未来のことを考えてしまうのは、何もなまえだけではない。かくいう自分も、口では今を楽しめばいいと言っているけれど、頭の端っこでは未来のことを考えていたりするのだ。
なまえになんて声をかけようか悩んでいると、なまえがぽつりと何かをつぶやいた。ジャックは首を傾げて、なまえの顔を覗き込む。


「何か言った?」
「ん、ジャックは、さ」
「うん?」
「ずっと、私のそばにいてくれる?」
「へ、」
「離れていかない?」


なまえは今にも泣き出しそうな顔をして、ジャックを見上げる。
そんな顔をして欲しくない、彼女には笑っていてほしい。そう思っているジャックは、安心させるかのようににっこり笑って頷いた。


「もちろん、ずっと一緒だよ」
「ほんとに?」
「ほんとに。僕がなまえのそばを離れるわけないじゃん」
「勝手にいなくなったりしない?」
「絶対しない!ていうかなまえも連れてくよ!」
「……約束」
「ん?」


なまえは小指をジャックに向ける。ジャックは躊躇うことなく、その小指に自分の小指を絡ませた。


「約束」
「ん」
「僕は絶対なまえから離れないから。ね、だから笑ってよ」
「…うん」
「なまえは笑顔が一番似合ってるんだからさ」
「へへ…、ありがと、ジャック」


照れ臭そうに笑うなまえを見て、ジャックは微笑む。今も、そしてこれからも、その笑顔を守っていくとジャックは小指に誓うのだった。

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