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 エイトと話しているとCOMMに通信が入る。通信相手は0組のモーグリだった。
 モーグリからホテルに集合するよう言われ、私とジャックとエイトは一緒にホテルへと向かった。

 ホテルの前にはもう皆が集合していて、ジャックと一緒にホテルの中に入ろうとするとある人たちが私の目に入る。目線だけをそちらに移すと、視線の先には蒼龍の人と皇国兵がいて何やらコソコソ話していた。


「頼んだぞ」


 蒼龍の人がそう言うと皇国兵はひとつ頷く。誰かの視線に気付いたのか蒼龍の人は慌てて皇国兵の側を離れどこかへ歩いていった。
 蒼龍の人が何故敵である皇国兵と話す必要があるのだろうか。


「メイ?」
「!ごめんごめん」


 私の足が動かなかったのを疑問に思ったジャックが、私の顔を覗き込む。慌てて謝ると何謝ってんのーと突っ込まれた。
 それを軽く流しホテルの中へと進んで行く。何かがおかしい。


「早く魔導院に帰りたーい」
「でもいい経験になりましたよね」
「そうだな」


 来賓室に皆が揃う。来賓室を見渡しているとセブンがどうかしたのか、と話しかけてきた。私は苦笑混じりに何でもない、と言うと急に何かが発動する機械の音が聞こえてきた。
 それに私含め皆が驚く。このイヤな感じ、身に覚えがある。まさか、いや今は休戦中なはず…一体何が起ころうとしているのだろう。


「?!」
「この感じ!?」
「クリスタルジャマー?!」
「皇国の攻撃か?!」


 このイヤな感じ、やっぱりクリスタルジャマーか。
 クリスタルジャマーが発動されたということは、私含めレムとマキナは魔法を使えなくなる。皆が焦っているのに、トレイだけ平然としていた。


「なるほど、ここは朱雀対策室だったわけですね?」
「言ってる場合か!」


 ケイトの突っ込みに私も同感する。そんな悠長なこと言ってる場合ではない。休戦中なはずなのにクリスタルジャマーが発動するということは、皇国があの条約を裏切ったということ。
 そんなことしたら皇国がフリになるだけでは…?それともこれが皇国にとって有利になるというのか。私は静かに頭を捻る。


──バァンッ


 急に扉が開き、皆はそっちへと視線を向ける。
 扉から勢いよく入ってきたのはアリアちゃんで、必死な形相をしていた。


「逃げて!院長とクラサメさんは──」


──バンッ


「!?」


 銃声の音と共にアリアちゃんの体は床に倒れる。
 私と0組は目を見開いてその光景に呆然とするしかなかった。すぐに我に返った私は慌ててアリアちゃんのほうへと駆け寄り無意識にケアルを唱える。


「(…あれ?)」


 私の手元にはケアルがかけられていて、どうして私が魔法を使えるのか。クリスタルジャマーが発動されているのに、自分が魔法を使えることに驚きケアルをかけるをやめてしまった。
 自分の両手を見ていると扉の向こうから皇国兵の声がした。


「いたぞ!全員捕らえろ!!」
「逃げるぞ!」


 エイトがそう言うと誰かが私の腕を掴み走り出す。
 私の腕を掴んだ人は言わずもがなジャックで、走りながら横たわるアリアちゃんを見つめることしかできなかった。