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「メイ待ってよー!」
「!」


 0711地区を歩いていると0709地区のほうからジャックが慌てて私を追い掛けてきた。
 私は立ち止まって後ろを振り向くと、ジャックは眉を八の字にさせている。


「ごめんなさい!」
「ん、ナインと仲直りした?」
「うん!その…まだ怒ってる?」
「……ナインと仲直りできたんなら怒んないよ」
「!そっか!よかったぁー」


 ジャックは安堵の顔をして私の右手を握る。全く世話が焼けるなぁと思ってるとエースが私たちに気付き話しかけてきた。


「本当、ジャックとメイはいつも一緒だな」


 エースは腰に手を当てて呆れながら言うと、ジャックはニッコリと笑い口を開いた。絶対ふざけたこと言うつもりだ。


「だぁって僕とメイは運命共同体だからねぇ!」
「そうなのか?」
「いやいや突っ込んでやってよ」


 はぁ、と溜め息をつくとエースは私とジャックのやり取りを楽しんでいるかのように微笑んでいた。エースまでも私をからかい始めるとは思いもよらなかった。
 機嫌が良くなったジャックは回りの景色を見て口を開いた。


「しっかし、褒めるわけじゃないけどたいした町だよねぇー」
「何がだ?」
「いやさ、この国って僕らのいる朱雀と違って魔法技術がないんだよ。なのにどうやってこんな町を作ったのかなぁーってね。メイもそう思わないー?」
「え、いやそれは…」
「代わりに魔導アーマーがあるだろ」


 エースがそう言うとジャックはまだ納得していないのかそう言われればそうなんだけどーと続ける。
 私はジャックとエースを交互に見ていると、エースが口を開いた。


「ここに来る前にクイーンに聞いたんだけど、魔導アーマーもクリスタルから生みだされる魔法のような物をエネルギーにして動いてるらしい」
「へぇー」


 興味あるのかないのかわからないジャックが相づちをするのを横目に、私はエースの話に耳を向ける。


「だからこの国だって、クリスタルがもたらした力を作られてると考えれば不思議じゃないさ」


 エースのその言葉に、ジャックはやっと納得したように首を縦に振った。


「なるほど、なるほどねぇー。クイーンもエースも頭いいねぇー!ね、メイ!」
「…そうだね」
「ジャック…メイも頭良いと思うぞ」
「え!?そうなの?!」
「エースやクイーンさんに比べれば全然だよ」


 それよりもジャックは私のこと頭悪いとでも思っていたのだろうか…いやでも驚いて私を見る限り、頭良いとは思ってなかったっぽいな。そうだったらものすごく心外だ。
 私がジト目でジャックを睨むとジャックはそれに気付き焦ったように、知ってたよーと頭をかいて笑う。エースは呆れて肩を落とし私を慰めるかのように視線を寄越すのだった。