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 0709地区へとやってきた私とジャックは、何やら揉めているナインと皇国兵がいた。あのナインのことだからきっと何か吹っ掛けられたのだろう。


「お、早速喧嘩かなぁー」
「こら、ジャック。そんなこと言わないの」


 止めに行こうと歩を進めると、キングさんがナインに近付いて行くのがわかった。
 自然と足が止まり、ナインとキングさんと皇国兵のほうへと見つめていると、キングさんがナインを連れてこちらへと歩いてくる。どうやらキングさんが喧嘩を止めたらしい。


「キングは本当、頼りになるよねぇ」
「確かに、しっかりしてるもんね」
「…僕も意外としっかりしてるし頼りになるよ?」
「はいはい」


 そう言えばジャックは少し不満そうな顔をした。きっとしっかりするところはしっかりすると思うけど、いつものこの調子で自分からしっかりしてるよと言われてもあんまり説得力がないと思う。
 そんなことないのにーとジャックは頬を膨らましていると、メイじゃねぇか!とナインに声をかけられた。


「メイも街回ってくんのか?」
「時間まで暇だし、そうしようかなって」
「ジャック、メイに迷惑かけるなよ」
「迷惑なんかかけてないよー。だって僕、キングよりしっかりしてるからさ!」
「?そうか」


 キングさんはよくわからないという様子でジャックを見ていた。
 本当ジャックってわかりやすいなぁってつくづく思う。ジャックのキングさんよりしっかりしてるという発言にナインは鼻で笑った。


「お前がキングよりしっかりしてるわけねぇだろオイ」
「む…ま、ナインより全っ然僕のほうがしっかりしてるのは当たり前だけどねぇ!メイもそう思うでしょ?」
「え」
「はぁ?この俺がジャックよりしっかりしてねぇって言いてぇのかコラァ!俺のほうがてめぇより全っ然しっかりしてるぜ!なぁお前もそう思うよな!」
「は」


 ジャックとナインはお互いを睨み付けながら私に詰め寄る。こんな低レベルな争いに巻き込まれるなんて、と頭を抱えたくなった。
 キングさんのほうに目線を向けると、キングさんは溜め息をついて二人の間に入ろうとした。


「お前らメイが困って」
「「邪魔(しないで!)(すんなコラァ!)」」
「………」


 どうやらキングさんでも止められないらしい。
 ねぇメイはどうなの!?おいどっちがしっかりしてるか答えろコラァ!とキンキンする程、二人は私の耳元で声をあげていた。
 すごくうるさい、うるさすぎる。こんなことで怒りたくはなかったけど、もう我慢の限界だ。


「メイは僕のほうがしっかりしてるって思ってるに決まってるでしょ!」
「いーやっ!俺のほうがてめぇよりしっかりしてるに決まってるだろが!」
「……ジャックもナインもうるさいっ!」
「「!」」
「だいたいね、しっかりしてるしてないよりもしっかりしてる人はこんな低レベルな争いするわけないでしょ!お互い売り言葉に買い言葉でキリがないし、そんなんばっか繰り返してたらいつまで経ってもしっかり者になれるわけない!断言できる!二人ともキングさんを見習いなさい!」
「「………」」


 一気に言い終えた私に、二人とも唖然としていた。キングさんも目を丸くさせて私を見ているのがわかると、何故か恥ずかしくなって俯く。
 ここに居るのが耐えられなくなった私は走り出すのだった。


((…………))
(ほら、二人とも仲直りしろ)
(え、あ、ご…ごめんね、ナイン)
(お、俺のほうこそ、わりぃ…)
(俺とナインはホテルに戻るからジャックは早くメイのところに行けよ)
(!そうだった!じゃまた後でね!)