72.5





 メイの側を離れないジャックに0組の面々は呆れ果てていた。
 解放作戦の後、メイとジャックは魔導院で初めて会ったと聞いた。まだ会って間もないというのにジャックのあのなつきように、0組は首を傾げながら見守っていた。


「まったく、トイレにまで着いていこうとするなんて思いもしませんでしたよ!」
「あは、トイレだって気がつかなかったんだよー」


 悪びれる様子もなくヘラヘラするジャックにトレイは腰に手をあててジャックに説教をし始めた。そんなジャックにサイスは気に入らないね、と吐き捨てる。


「何がだ?」
「アイツのことだよ」
「…メイか」


 サイスは腕を組み眉間にシワを寄せジャックとトレイを睨み付ける。セブンはそんなサイスに、どうしたものかと頭を捻った。


「…サイスはメイのことが嫌いなのか?」
「嫌いじゃないが…気に入らない。…アイツ見てると危機感無さすぎてイライラする」
「………」


 それは反対の意味で捉えると心配してるということになるのではないか。きっとサイスはそれを認めたくないのだろう。
 セブンは少しだけ笑って、そうかと呟いた。



 ジャックがトレイに叱られている中、ソファに座ってそれを遠目に見ている者たちがいた。


「ジャックってなんであんなにメイの側から離れないんだろうな」
「だねぇ。よくやるよ、本当」


 エースとケイトがそう言うと確かに、とナインやエイトが首を縦に振る。いつかの作戦で、メイが中にいるからと自分から率先して入って行ったことがあった。そしてジャックの言っていた通り、メイと合流することになったことを思い出す。
 どうしてあの時、ジャックはメイと会えるとわかったのだろうか。


「メイさんって不思議な方ですよね…」


 デュースが両手を握って、独り言のように呟く。それを聞いたケイトは確かに!とデュースに同意した。
 ケイトは、メイとは話しやすいし不思議と信頼できるんだよね、と笑いながら言う。


「そういう感覚ない?」
「…確かに、メイは他の候補生と違って話しやすいな」
「俺も、メイだけは敵に回したくねぇって思ったもんなぁ」
「あのナインが?…メイって本当、不思議な奴だな」


 少しだけ騒がしくなったと思い、視線をそちらに向けたらトイレから戻ってきたであろうメイがジャックに抱き着かれそうになっていた。それを阻止するメイとトレイに笑ってしまう。


「メイが0組に来てくれたらいいのにね」
「そうですね」
「そうなったらまた一段と騒がしくなるな」
「メイが来たら楽しそうだよなオイ」
「…ナインまで騒がしくなりそうだな」


 メイのほうへと視線を向けていると、メイはセブンの後ろに隠れていて、ジャックはトレイに押さえられながらもメイに近付こうとしていた。そんなメイたちにエースたちは笑いながらメイを助けに向かうのだった。


(いい加減にしないかジャック)
(そうだぞ、メイが困ってるだろ)
(嫌がってんのわかんねぇのかコラァ)
(なっ…!ちょっと、メイと僕の邪魔するなぁ!)
(ふふ、楽しいですね)
(…アタシたち敵地のど真ん中で何してんだか)
(緊張感ないよねぇ〜)
(あいつら、こんな状態で何してるんだよ…)
(マキナに同感だ、全くあいつらは…)
(わたくしも同感ですね。本当緊張感を持って行動してほしいものです)