68.5





 0組が管理室にいるとの情報を元に、カトルと私は足早に管理室に向かっていた。管理室に着いた時にはすでにもぬけの殻で急ぎ管理室の先へ進もうと足を踏み出した瞬間、頭に鋭い痛みが走った。
 右手で頭を抑え、足が止まる。


「?どうした」


 カトルが私に駆け寄って顔を覗き込む。私は顔が歪まるのを感じながら大きく息を吐いた。


「はぁ…っ」
「大丈夫か?」


 カトルの問いに首を縦に振り大丈夫です、と呟く。それよりもニンブスに殺られる前に早く、0組のところに行かなければ。
 目眩がする最中、私は焦る気持ちを胸に一歩一歩進んでいく。


──ゴゴゴゴゴッ


「!」


 突然地鳴りが響くと共に建物が揺れだす。カトルが私の腕を掴み揺れがおさまると同時に、ずきずきと痛かった頭痛が急におさまった。揺れがおさまるとカトルは腕を離す。


「…大丈夫か」
「…どうもありがとうございます…」


 大丈夫かと言われてこの人は私が転倒しないように腕を掴んでいたのか、と気付きお礼を口にする。その場に居たくなくて私は前へと足を動かした。


「カトル准将!」


 皇国兵がカトルに声をかけ、何かを伝えているのがわかったが私は構わずに歩を進める。ブリューナクが置いてあるという開発棟第9格納庫を覗くと、そこには黒い煙をあげてバラバラになっている機体しかなかった。


「こっちだ」
「!」


 カトルが私の腕を引っ張る。私は引っ張られたまま、0組がいるであろう場所へと向かった。その道中、ある放送が皇国内に流れる。


『全皇国兵へ通達。現時刻をもって戦時特例497が発令されました。戦闘行為を含む全ての戦闘行動を中断、中止してください。コンコルディア、ルブルム、両国との休戦協議により、戦時特例497が発令されました…繰り返します』
「え…?」


 どういうこと?コンコルディア、ルブルムとの休戦協議?
 私はカトルを見上げ走りながら、どういうことだと問うとカトルは話は後だ、とだけ言って走る速度を上げた。



 動力室へ入るとそこには肩を上下させて、膝に手をついている0組の姿が目に入る。ニンブスがこちらに向かって歩いているのに対し、ナインが槍をニンブスに向けて攻撃をしようとした。


「やめて!」
「やめろ!」


 カトルと声が重なる。私たちの声に0組は目線をこちらに向けた。カトルは歩いて0組のもとへと行く。
 私もそれに着いていこうとしたとき、ニンブスが目の前で立ち止まった。真っ直ぐ見つめてくるニンブスに私は眉間にシワを寄せる。


「…な、なに…?」
「……身体は平気か」
「!へ、平気、ですけど…」
「…そうか」


 それだけ言うとニンブスは私の前から消えた。
 何故ニンブスが私の身体に気をつかうのか。平気か、と言うのは何に対してなのか。もう意味がわからなさすぎて頭を抱えたくなった。