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 無事ブリューナクを倒した0組は奥へと進み白虎のルシ、ニンブスと対峙していた。宙に浮いて0組に背中を向けたままのニンブスにナインが声をあげる。


「てめぇ降りてこいよコラァ!」


 ニンブスはゆっくりと振り向き、0組を見下す。
 攻撃を仕掛けてこないニンブスに対し、ケイトが銃を構え魔法弾を撃った。それを軽々と避けるニンブスにケイトはチッと舌打ちをうつ。


「…どうして攻撃をしてこない」
「………」
「攻撃してこねぇんなら、こっちから攻撃してやるよ!」


 サイスはそう言うとニンブスを狙って鎌を振り上げた。ニンブスはそれを剣で弾き返す。反撃が来るかと身構えるがそんな様子はなく、ただ宙に浮き腕を組んでいるだけだった。
 0組はそれぞれ顔を見合わせる。


「貴様らは…護られている」
「!ま、護られている…?」
「どういう意味よ!」


 その一言を言うだけで、ニンブスはそれから口を開くことはなかった。そして無抵抗なニンブスに対し0組は戸惑いを隠せなかった。

 それから0組とニンブスの一方的な攻防戦が始まる。ただニンブスが0組の攻撃を避けるだけというものだが、0組の攻撃は全くニンブスに当たることはなかった。


「はぁ、はぁ…」
「何あいつ…!」
「チョロチョロ動きやがって…!」


 0組は肩を上下させてニンブスを見上げる。するとニンブスは何を思ったのか地上に降り、出口に向かって歩き出す。それを0組が追い掛けようとしたところで、突然緊急放送が流された。


『全皇国兵へ通達。現時刻をもって戦時特例497が発令されました。戦闘行為を含む全ての戦闘行動を中断、中止してください』
「え…?!」
「ど、どういうことだ…!?」


 0組は互いに顔を見合わせ、一体何が起こっているんだと困惑していた。


『全皇国兵へ通達。現時刻をもって戦時特例497が発令されました。戦闘行為を含む全ての戦闘行動を中断、中止してください。コンコルディア、ルブルム、両国との休戦協議により、戦時特例497が発令されました…繰り返します』
「コンコルディア…!?」
「休戦協議だと…?!」


 再び放送で流された休戦協議という言葉に0組は目を丸くさせ、驚きを隠せないでいた。ニンブスが0組に背中を向けてその場を去ろうとすると、ナインがニンブスへ攻撃を仕掛けようとする。


「待て……!」
「やめて!」
「やめろ!」


 誰かがナインに制止の声をかける。自然と0組は視線を声のしたほうへと向けると、そこにはカトル・バシュタールとシドの側近らしき人物が立っていた。そんな中ジャックは目を見開き体を強張らせるのだった。