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──開発棟 鋼機運搬路



 0組は侵入に気付かれたものの、任務の目的を果たすために前へ突き進んでいた。向かってくる皇国兵を倒しながら、新型魔導アーマーが格納されている場所へと向かう。


「あとはルシに任せて後退するぞ!」
「!」


 急に引き上げ始めた皇国兵に首を傾げて進んでいくと、皇国兵が声をあげて退避していく。ルシという言葉に0組は体を強張らせた。


「あ!あれ!」


 レムが声をあげると、すでに白虎のルシが0組の目の前に降り立っていた。戦闘態勢に入ろうとする前にニンブスは一番前にいるジャックへと斬りかかろうとする。


「ジャック!」
「くっ!」


 ジャックへ斬りかかろうとしたニンブスは寸前のところで手を止めた。


「…あの女か」
「え…」


 ぼそりと呟いたニンブスにジャックだけが反応する。どうやらジャック以外気付かなかったようだ。
 ニンブスはジャックから離れ、スッと姿を消す。呆気に取られているジャックに、0組はニンブスが何をしたかったのかと不思議に思った。


「大丈夫か、ジャック」
「!、あ、うん…」
「それにしてもあのルシは何がしたかったんでしょうか…」


 トレイが顎に手をあてて呟く。そんなトレイにサイスが背中を叩き、あたしらに怖じ気づいたんだろ、と鼻で笑って言う。そうでしょうか…と納得できないトレイに、今度はケイトがまぁあいつから逃げたのは事実だし、とサイスに便乗した。そんな3人にクイーンが喝をいれ、先へと進む。
 しかしジャックだけは眉間にシワを寄せて考え事をしていた。

 あのルシは自分に斬りかかる前に、本当に小さな声で"あの女"と呟いた。ルシの言った"あの女"というのは一体誰なのか。そう考えてジャックの頭の中に1人の人物が浮かぶが、それを否定するように首を横に振る。


「(まさか…ね)」
「?大丈夫か、ジャック」
「!ごめん、大丈夫」


 キングが心配そうに振り返ると、ジャックは慌てていつもの笑顔を作り駆け寄るのだった。



──開発棟 第21管理室



「っ!」
「?どうした」


 メイは突然頭を片手で押さえて立ち止まる。そんなメイにカトルは振り返り、メイに近寄ると苦しそうにメイはカトルを見上げた。


「はぁ…っ、」
「大丈夫か?」
「大丈夫、です…!早く、行かなきゃ」


 片手で頭を押さえたままふらふらと歩き出すメイに、カトルは肩を掴もうとする。


──ゴゴゴゴゴッ


「!」


 地鳴りが響くと共に建物が揺れだした。メイは建物が揺れているのも構わずに歩き続けようとしたので、カトルは転倒しないようにメイの腕を掴む。少しすると地震はおさまった。


「…大丈夫か」
「…どうもありがとうございます…」


 カトルが腕を離すとメイはお礼を言って前へと進んで行く。追い掛けようと足を踏み出したら、後ろから誰かが駆け寄ってくる足音がした。


「カトル准将!蒼龍が…」
「!」


 通信兵から事情を聞いたカトルはすぐにメイの後を追うのだった。