61
ジャックはリフレッシュルームに来ていた。 メイを一目だけだったが見れたことに安心していたら、急にお腹が空いたので食事をとりに来たのだ。カウンターに座ると後ろから声をかけられた。振り向くとそこにはエンラが立っていた。
「よっ、ジャック、だったよな」 「そうだけど…僕に何か用ー?」 「用ってほどでもないんだけどよ」
エンラはジャックの隣に座る。 ジャックはマスターにスパゲティとお茶を頼む。マスターは良い返事をするとすぐさまスパゲティを作る作業へと入っていった。
「お前、メイ知らねぇか?」 「!…なんでー?」 「いや、メイとCOMMが繋がらなくてよ。ナギもあの作戦が終わった後すぐ任務に出てっちまったから、聞くに聞けなくなったし」
ナギの名前にジャックはピクリと反応したが、エンラはそれに気付かずに喋り続けた。
「で、メイどこにいるかわかるか?」 「………」 「……知らねぇのか?」 「!あ、いやー…知ってるような知らないような」 「なんだよ、はっきり言えって」
ジャックは頭を捻った。 メイがどこにいるかは自分はわかっているが、エンラに言ったところで信じてくれるわけがない。それどころかバカにされてしまう気がする。どう答えようか悩んでいると、エンラに誰かが話しかけた。
「えーっと、あんたがエンラだっけ?」 「?そうだけど、なんだ?」 「今セブンに、レムと話してるからエンラって奴を呼んできてくれって頼まれたのよ」 「セブン……あぁ!セブンにレムちゃんの件頼んでたんだった!わりぃ、サンキュー!おっと、ジャック、メイに会ったら俺んとこに連絡するよう言っといてくれ。じゃあな!」
そう言うとエンラは走ってリフレッシュルームから出ていった。ジャックははぁーと溜め息をつき、ケイトとセブンに心の中でお礼を言う。ケイトはジャックにあんたここで何してんの?と問い掛けた。
「何ってご飯頼んでるんだよー」 「はぁ?こんな中途半端な時間に?変なの」
ケイトは腰に手をあてて怪訝な顔をする。確かに今はお昼時でもないし、むしろもうすぐ日が暮れてしまう時間だった。ジャックはまぁいいじゃん、と軽く受け流す。
「あ、いたいた!ちょっと!えーっと…ジャック?だったかしら」 「あ、あんた」
ジャックを呼んだのはカルラだった。ジャックは顔をカルラのほうに向けると、ああ、と何かを思い出したかのように声をあげた。
「噂の性格更生プロ、カルラ!」
ジャックがそう言うとケイトは隣で頷きながら、話は聞いてるよと笑って言う。 ジャックはいつかのシンクから聞いた話を思い出し、そう口にした。あの時ジャックもメイと一緒にいたのだが、シンクとトレイとのやり取りを聞いてるよりも、メイとのやり取りしか思い出せないでいた。
「その怪しい肩書きやめてよ!てそうじゃなくて」 「へ?じゃあなんて呼んで欲しいのー?」
ジャックは首を傾げてカルラに問い掛ける。カルラは何かを言いかけるもジャックの問いに、顎に手をあて口を開いた。
「私は別に心理学者でも講師でもないの。言うならば、炎の商売人てところかしら」 「炎の商売人?」
ケイトも首を傾げたので、カルラは力強く、そうっ!と声をあげた。
「私にとって全ての人がお客様!人格破綻者からお腹を空かせた子供まで!いかにも軽薄でストーカーする人も!高飛車な人も!みんなにサービスや物を提供します!」
カルラは顔を輝かせて2人を交互に見る。 ケイトは腕を組み眉間にシワを寄せ、ジャックはカルラが言った言葉に肩を落とした。
「なんか今サラッと酷いこと言われた気が」 「あたしもなんか悪意を感じたけど」 「そんな心配症のお二人には心の栄養ドリンク……"栄輝"がお勧め!一口飲めばパッと心が明るく前向きに!お一つ7万ギルです」 「「高っ!!」」
カルラはニッコリと笑い、右手を2人に差し出す。7万ギルと聞いて2人はすかさず突っ込んだ。ケイトが商売人ていうかぼったくり?と疑いをかけ、ジャックはそんな大金栄養ドリンクに使いたくないと拒否をする。 そんな2人にカルラはチッと舌打ちをして文句を呟いた後、聞きたいことを思い出したのか、ジャックのほうに再び顔を向けた。
「危ない危ない、ちょっとあなたに聞きたいことがあったんだったわ」 「?僕に?」 「そう。あなた、メイのこと知らないかしら。今月入ってずっと音信不通なのよね」 「!」
ジャックは顔を俯かせ、静かに首を横に振る。カルラはそう、なら仕方ないわありがとう、と言いジャックとケイトの前から去っていった。ケイトはそういえばメイ、見ないわね、とジャックに話しかけた。ジャックはそうだねぇ、と呟くだけだった。
|