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ジャックはイスカ潜入指令任務後からずっとそわそわしていた。エースが話しかけてもどこか上の空で、話しても右から左へ受け流して全く話しにならなかった。どうかしたのかと問うてもいつものおちゃらけた様子で、なんでもないよとジャックは笑って言う。 しかし当のジャックは授業中もずっと外を見つめているし、任務後から正面ゲートに入り浸っていた。何か言っても軽く流してしまうジャックに0組は見つめることしかできなかった。
ある日、ジャックはマザーから定期検査のためにと呼び出され、アレシアの部屋にいた。
「検査した結果、異常はなかったわ。至って健康よ」 「…そう」 「あら、嬉しくないかしら?」 「!ううん、すっごい嬉しいよぉ」
アレシアに悟られないように笑うジャックに、アレシアは目を細め煙管を口にした。紫煙を吐き出すとジャックを見据え、何かあったの?と優しく声をかける。するとジャックの瞳が少しだけ揺れた。
「…なんでもないよー!」 「…そう、何かあったら遠慮なく言うのよ?」 「うん、ありがと、マザー」
じゃあ行くね、と踵を返して部屋から出ていくジャックに、アレシアは見守ることしかできなかった。アレシアは椅子に座り窓の外を見上げる。
「今回はどうなるかしら」
眼鏡をクイッとかけ直すとアレシアは微笑を浮かべるのだった。
* * *
「メイ…」
アレシアの定期検査が終わりジャックは今日も正面ゲートでメイを待ち続けていた。 あの後イスカで偶然会ったナギからメイの居場所を教えてもらったが、私情での単独行動は混乱を招きかねないので原則禁止とされていて、ジャックは身動きが取れないでいた。依頼や任務となったら話は別となるが、私情での行動は許されなかった。 アレシアや仲間に迷惑をかけたくなかったジャックは、自分もロリカ地域に行きたい衝動を抑え、その場はナギに任せ自分は魔導院へ戻った。しかし、いつまで経ってもメイからの連絡も、ナギからの連絡もジャックの元には届かなかった。
「…あ!」
正面ゲートからナギが現れる。しかしメイの姿はない。 ここに居ないということは、ナギと帰ってくる途中にまた何か任務をくだされたのだろうか。それとも自分の知らない間に魔導院へと戻ってきてるのだろうか。 嫌な予感がしつつもジャックは、ナギの元へ駆け寄り真っ先にメイは?と聞いた。ナギはジャックを見て顔をしかめる。
「……いねぇよ」 「…え?」 「ロリカに行ったが、そこにメイは居なかった」 「…な、ナギったら、冗談言わないで本当のこと教えろよー!全く意地悪だよなぁー」 「………」 「ね、ねぇ…そんな冗談、全然笑えない、よ…」
ナギは顔を歪ませてチッと舌打ちをする。そんな様子にジャックはようやくナギが冗談を言っていないことに気付く。
「……メイは、今どこにいるの…?」 「…………」 「ナギはメイの居場所知ってるんでしょ、?」 「…あくまでも俺の予想だが」
ナギは顔をゆっくり上げてジャックを見据える。
「メイは、多分ミリテス皇国にいる」 「…えっ!?ミリテス皇国!?なんで…」 「俺もなんで連れ去られたのかはわかんねぇ、…俺が思うに、玄武クリスタルの回収にきた皇国に見つかって捕まったんだと思う」 「メイ……」 「俺たちがメイのこと覚えてんだ、生きてるのは間違いない」
ただ、俺らがメイを覚えていられるのも時間の問題かもしれない。そう呟くナギにジャックは歯を食い縛った。何もできない自分が不甲斐なくて情けなかった。 ナギはそんなジャックを慰めるように肩を軽く叩き、正面ゲートを後にしたのだった。
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