49.5





 イスカ奪還作戦は0組の活躍で見事成功した。
 ナギは遺体の回収を行いながら、皇国兵が生き残っていないか確認をしていた。


「……いねぇ」


 ナギはこの作戦が始まる前何故か嫌な予感がした。
 民間人の救出はできなかったが、イスカの街は皇国から奪還することに成功した。民間人の救出、に嫌な予感がしたのではない。この作戦に関係ないような気がしてならなかった。


「あれ、ナギー?」
「…お前なんでここにいるんだよ」
「メイ探してるんだけどさぁ…でも気配がないんだよねぇ」


 メイが今どこにいるのかさえ、ナギにもジャックにもわからない。ナギはジャックのその言葉を聞いて肩を落とした。


──ピピッ


「!」


 ナギの無線に連絡が入る。ナギはジャックから少し離れ無線を繋げた。ジャックはそれを遠くから見つめる。


──任務ご苦労だった。


「…ああ、何の用なんだよ」


──よく聞いてくれ、ナギには今から向かってもらいたい場所がある。


「向かってもらいたい場所?」


 作戦が終わったばかりなのにすぐ任務か。こっちはメイを探しているのに面倒だな、とナギは心の中で悪態をつく。
 ナギは無線の先にいる諜報員に耳を傾けた。


──先日、ロリカ同盟に向かわせたメイの通信が途絶えた。


「はぁっ!?おい、それどういうことだよ!なんでメイをあんな危ないところに向かわせた!?」


 突然取り乱したナギにジャックはビクッと驚く。そしてナギのほうを見つめた。
 ナギのあの取り乱しように、話している内容はメイのことだとすぐわかった。


──落ち着いて聞け、ナギ!我々が彼女のことを覚えているってことは、まだ彼女は生きているということだ。


「……っメイがいつ死ぬかもわかんねぇじゃねぇか!メイが死んだらいつ俺が、俺らがメイを忘れるかもわからねぇのに…っ!」


──気持ちは分かるが少し落ち着け、ナギ。


「っんなこと聞いて落ち着いてられっかよ…っ!」


 くそっと呟きナギは拳を強く握りしめた。その様子を見ていたジャックも自然と歯を食い縛る。
 メイに何かあったということは、ナギを見ていれば一目瞭然だった。ナギは一呼吸置いて口を開く。


「……俺はすぐあっちに向かう」


──…ああ、様子を見てきてくれ、くれぐれも気を付けろよ。


 ブツッと無線が切れるとナギは直ぐ様踵を返し、イスカを出ようとした。しかしそれをジャックに止められ、ナギはジャックを睨み付ける。


「…どけよ、ジャック」
「メイは今どこに」
「ロリカだ」
「!」
「メイは俺が必ず連れ帰る。お前は0組なんだから自分の任務に集中しろよ」
「…………」


 ジャックの返事を待たずにナギはイスカの街から消えた。本当はジャックも今すぐにロリカへ向かいたかったが、ナギの言う通り自分は0組であり0組だけの任務を全うしなければならない。
 ジャックは地面に転がっていた石を思いっきり蹴り、空を見上げた。

 どうかメイが無事でありますように。

 ジャックはそう祈ることしかできない自分が悔しかった。