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 ロリカ同盟へと入った私はチョコボと共に、アルテマ弾が投下された場所へと徐々に近付く。アルテマ弾が投下されたところは大きなクレーターとなっていた。


「!」


 クレーター付近には皇国軍の飛空艇があり、ロリカの地下は煙が上がっていた。
 私は皇国軍に見つからないようにクレーター近くにあった森の中へと身を潜める。時折悲鳴にも似た叫び声が聞こえ、ロリカの地下にはまだ玄武の兵がいることに気付いた。
 アルテマ弾が投下されきっと玄武はほとんどの兵を失っただろう。それでも玄武の兵はクリスタルを守ろうと諦めずに戦っていた。

 私は魔導院にいる諜報部に状況を報告し、それと同時にメモもしておく。もし私が死にそうなとき、ニンジャチョコボにこれを渡し魔導院へ届けさせるためだ。
 私は夜が明けるまで廃屋で一夜を過ごす。夜が明けたら一度森の外へ出て、クレーターに近付くことにした。


 夜が明けて私は静かに廃屋を出てクレーター付近へと忍び寄る。夜が明けてからも未だ銃声の音や、爆発音、機械の動く音が私の耳に届いていた。クレーターの中を覗き込むと、私は唖然とした。いくつもの線が束となり、穴の中へと差し込まれているのが見える。皇国は玄武クリスタルを奪うつもりなのだろう。


──ピッ…ビ──ッ!


「!」


 やばい!そう思ったが既に手遅れだった。銃声の音や爆発音に気を取られていたせいで、後方にいたノーマッドに気付かなかった。私はすぐに小刀を出し、警戒態勢に入る前にノーマッドを破壊する。


(最悪…っ!まさか見つかるなんて)


 私はチョコボを呼び、ここから引こうとした。しかしチョコボに乗ろうとしたところで中型艦載艇が道を阻んできた。


「くっ…!」


 こんなところで死にたくない、けど…!
私はチョコボにメモ帳を渡し、魔導院へ戻るよう命令する。しかしニンジャチョコボは全く動こうとしない。


──ドンッ!

「わっ!」


 中型艦載艇から銃弾が放たれ砂ぼこりが舞う。
 私は咄嗟にウォールを貼り、チョコボと一緒に伏せて銃弾が治まるまで待つ。目の前にちょうどいい岩陰があったのでチョコボと共にそこへ身を潜める。

 このままじゃ私もチョコボも殺られてしまう。どうかチョコボだけでも助かって欲しい。
 私はチョコボを見つめ、魔導院に戻るよう説得をする。中型艦載艇から皇国兵が出てくる足音が聞こえた。もう時間はない。

 お願いだから魔導院に戻って!


「……クエッ!」
「!」


 やっと通じたのかチョコボは元気よく鳴いた。そして来た道に向かって走り出した。

 あぁ、良かった、これで──。


「貴様っ…!朱雀の!」
「おい!朱雀の人間が居たぞ!」


 もうやれるとこまで、やるしかない。
 私は魔法を唱え、ファイガBOMを自分の周りに一気に放出した。多少の皇国兵は焼き殺せたようだが、中型艦載艇から出てくる皇国兵の数に私1人ではきっとさばけない。覚悟はしていた。けどいざこんな状況になると恐怖心でいっぱいだった。それでも、最後まで足掻き続けてやる。

 私は魔力が無くなるまでBOMを打ち続けるのだった。