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 トゴレス地方、キザイアの町に着いた私とナギは町外れにチョコボを置き朱雀軍主力部隊と合流する。そこでシノさんに会い北門へと案内してくれた。案内するときシノさんは私に近付きコソッと喋り出した。


「…メイ」
「?なんですか?」
「トキトって…エミナさんが好きなんだってね」
「えっ」
「こないだリフレッシュルームで喋ってるとこ聞いたの」
「そ、そうだったんですか…」
「エミナさんってすごい人気あるんでしょ?バッカみたい!そんな人がトキトのこと、好きになるはずないのにね!ね、そう思うでしょ?」
「そ、そうですね…」


 シノさんは興奮気味に喋る。トキトさんには悪いがここはシノさんに賛同しておくことにする。シノさんを傷付けるなんて出来ないし。今のを聞く限り、シノさんはトキトさんのことが好きなんだろう。
 シノさんは私が賛同してくれたということに満足したのか、上機嫌で私たちと別れた。


「………」
「…な、なに」
「女って大変だな」


 ナギは私の肩をポンと置き歩き出す。私はふぅと溜め息をつくとナギの後ろを追い掛けた。



 しばらくしてキザイア陽動作戦が実行された。私とナギは朱雀兵に混じり皇国兵を倒しながら諜報部からの連絡を待つ。


──聞こえるか、ナギ、メイ。


「!はい」


──南通りの奥にコロッサスらしき機体を確認。すぐ向かってくれ。


「了解」


 ナギと私は顔を見合わせて朱雀兵と皇国兵の戦いを掻い潜り南通りへと向かった。
 南通りに着くと数十人の皇国兵が現れてこっちに向かって銃を乱射してきた。私とナギは一度建物の陰に非難する。


「ちっ、めんどくせぇな」
「魔法で特攻する?」
「あぁ、そうするか…っとお前は俺の後ろにいろよ?」
「え、なんで?私が先に行ってBOM撃ったほうが…」
「あのなぁ…大の男が女の後ろからのこのこ出られるかっての!」
「そんなこと言ってる場合じゃ」
「朱の魔人だぁああっ!」
「!」


 朱の魔人という言葉に私とナギは顔を合わせた。そして建物の陰からそっと顔を出すとそこには0組の姿があった。ある人物を見つけた私は頭を抱える。なんでいつも私がいるところにジャックは現れるのだろうか。


「ジャックとキング、ケイトとクイーンか」
「はぁ…でも南側から来たよね?」
「候補生部隊も投入するっつってたからな。裏口から突撃したんだろ。しめた、皇国兵があいつらに気を取られてるうちに奥まで行くぞ」


 そう言うとナギは0組にバレないように動き出す。私もナギのあとに着いていく。静かに動きながらジャックたちの様子を伺うと襲ってくる皇国兵を一蹴している姿が目に入った。本当0組ってすごいな。


「っと。アレだな」


 ナギが足を止め建物の中から外の様子を見る。そこには皇国兵数人とコロッサスらしき機体が一機だけ置かれていた。私は自分とナギにウォールとプロテスをかけ終わるとナギが私を見て頷いた。


「よし、フォーメーションAだ」
「フォーメーションAなんて知らないっつーの!」


 こんなときにボケるナギに突っ込むとつれねぇなぁと呟いた。その後ナギの顔が一気に変わり、コロッサスに向かって走り出した。


「なっ!どうして朱雀兵がこんなところに…っ!くそっ」
「っサンダガ!」
「うあ゙あ゙ぁぁっ!」


 ナギに向かって銃を構えた皇国兵にサンダガをお見舞いする。素早い動きでナギも次々と皇国兵を仕留めていく。


「くそっこれでもくらえっ!」
「!ナギ、危ないっ」


 コロッサスが体を捻りナギへ向かって銃弾を飛ばした。ナギは地面を蹴ってそれを華麗に避ける。ホッと安心しているとコロッサスはいきなり銃を乱射し出した。


「うおっと、なんだこいつ…!おかしくなってやがる」
「壊れたのかも…」
「チッ、早くケリつけなきゃ0組が来るっての…!」


 ナギはコロッサスが放つ銃弾を避けながら確実に攻撃を与えていく。私も魔法を唱えながら銃弾を避けコロッサスへと放った。
 建物を破壊しながら進むコロッサスに私たちは悪戦苦闘を強いられながらも、何とかコロッサスを破壊することができた。2人して息を整えているとナギは突然私の腕を掴み、建物内へと入る。突然のことで呆気にとられた私はナギにどうしたのと訪ねると、ナギは顔をクイッと外に向かって動かしたので、目線を外に向けた。そこには、0組の面々がコロッサスの周りに集まっているのが見えた。


「…おかしいな」
「えぇ、そうですね」
「?何がおかしいのよ?」
「まだこの機体は熱を持っている。さっきまで誰かがこいつと戦っていたのだろう」
「え、そうなんだ。でもアタシたち以外にここに来る奴って朱雀軍の人らだけでしょ?その人たちが殺ったんじゃない?」
「まぁ、そうかもしれませんが…」


 クイーンが眼鏡をあげてコロッサスを見つめる。ジャックはジャックで顔を忙しなく動かしていた。それをキングに指摘されると何でもないと言い肩を落としたのが見えた。


「後は朱雀軍の奴らに任せとけば大丈夫だろ」
「…そうだね」
「にしても本当ジャックは日常生活といい作戦のときといい、必ずといっていいほど近くにいるよなぁ」
「そ、うだね」


 深い溜め息をつくナギに私は苦笑を浮かべるしかなかった。

 こうしてキザイア陽動作戦は見事朱雀軍が勝利し、町の中は朱雀兵たちが高々に拳をあげて歓喜の声が上がっていた。それを横目に私とナギはキザイアの町を後にしたのだった。