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言った後急に恥ずかしくなった私はジャックから逃げるように自室へと戻った。ジャックは追い掛けて来なかったので自室に入ってホッと一息つく。 今思うと甘えてもいいとか何様なんだ自分。自意識過剰にも程があるだろう…。そりゃ確かにジャックの気持ちはわかる。好いてくれてるっていうのも伝わってくる。だけど今こんな状況で恋がどうの気持ちがどうのと言っている暇ははっきり言ってない。ジャックに諦めろと言いたいけど、それを言うのに躊躇する私もいる。
私は狡い人間だ。人からどう思われようが勝手だとばかり思っていたのに、いざ好かれたら良く思われようと欲が出ている。
「…はぁ」
自分自身に呆れてしまい溜め息が出る。ベッドに横になり天井を見上げた。明日からどんな顔をしてジャックの前に出ればいいだろう。あんな恥ずかしい発言をするなんて私自身思いもしなかった。 確かに力になりたいと思ってるけどあんな事言わなくても他に方法はいくらでもあったはずなのに。
──ピピッ
ベッドの上で悶々としていたら無線が入った。こんなときに任務なんてタイミングが良すぎる。私はすぐに無線に応答した。
「はいっ」
──よう、なんだ元気だなお前。
「なんだナギか」
──なんだとはなんだよ、俺じゃいけなかったのか?
「あ、いやそういうわけじゃないんだけどね。で、なに?任務?」
──まったく、あぁ25日に任務が入った。
「そう、わかった。ブリーフィングは?」
──また後でメイの部屋に行くから無しで。あ、ジャックには会ったか?
ナギのその一言にドキッと胸が高鳴る。私はナギに気付かれないように会ったには会ったと曖昧に返すがナギはそれを見逃さなかった。
──会ったには会った?なんだそれ。会ったんじゃねぇか……まさか、何かやられたのか!?
「違う、違うよ!なんもされてないから大丈夫!」
ナギは無駄に勘がいいから困る。いや私も分かりやすいかもしれない。さっきまでジャックと居たせいで今質問されたら絶対挙動不審になってしまう自信があった。 本当かとしつこく問うナギを落ち着かせてから無線を切るがまた再び無線に連絡が入る。またナギかと思ってまだなんかあるの、と強い口調で無線に出たらさっきまで側にいた人物の声が聞こえた。
──メイ?
「げ…じゃ、ジャック?」
──うん。なんでさっき逃げたの?
「え、えーとそれは……なんとなく」
私も素直じゃないな。でも恥ずかしくなって逃げたなんて言わない。だって絶対ジャックは私が恥ずかしくなって逃げたってことに気付いてる筈だから。
──さっきはありがとねぇ。
「いえ…」
──僕すっごい嬉しかったんだよぉ。嬉しすぎて追いかけるの忘れちゃったくらい。
「ははは…さ、さっきの言葉忘れていいから!」
──むーりっ!僕、もう遠慮しないから。
今までも遠慮してないような気がするんだけど。もう遠慮しないというのはどういうことだろう。まさか前よりもスキンシップが激しくなったりしないよね。それだけは勘弁してもらいたい。
──ねぇ今どこにいるのさぁ。
「あ、これからナギと用があるから会えないよ」
──ナギと?
「うん、だから…」 「だからメイは会えねぇって言ってるじゃねぇか。てことでじゃあな、ジャック」
ブツッと切れる無線とナギの声に私は唖然とした。いつの間にナギは私の部屋に浸入していたのか。しかも気配に全く気がつかなかった。 本当にナギは諜報部には適しているなと改めて感心してしまった。ておい、感心してる場合じゃないでしょ。
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