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0組の教室を出た私はすぐに魔法陣で魔法局へと向かう。ドクター・アレシアの部屋の前まで行きノックをしようとしたら部屋の中から話し声がした。ドクター・アレシアの声と多分この声はレムさんだ。私はいけないとは思いながらも扉の前で神経を耳に集中させた。
「長くないことは確かだけど、断定はできないわね」 「………」
長くない?何が長くないのだろうか。
「前の担当から聞いたけど、あなたの望みは候補生として最期まで戦場に立つことなのね?」 「はい。どうせ…治らない病気ですから、寝たきりで死を待つのは嫌なんです」
これを聞いてすぐにピンときた。レムさんは治らない病気を患っていて死までの時間がもうそんなに残されていないということだろう。
「じゃ、後でその旨を書いた書類を提出なさい。新しい薬を処方しておくから毎朝飲むことね。ただ夜には副作用でひどい痛みがあるかもしれないけど」 「はい、わかりました」 「以上よ」
私は話が終わったと思って再びノックをしようと片手で扉を叩こうとすると、レムさんが話し始めた。
「あの」 「まだ何かあるの?」 「病気のこと0組の皆には黙っていて欲しいんです」 「ああ、そんなこと?候補生の個人データには守秘義務があるの。心配しなくても言わないわ」
守秘義務なんてあったんだ、と思って私が先にノックをする前に目の前の扉が開く。やばいと思った頃には時既に遅くて、私に気付いたレムさんは目を丸くさせた。
「えっ…メイさん…?」 「…ど、どうも」
少し気まずい私は苦笑いで挨拶する。少しだけ開いていた扉は全開になりドクター・アレシアが私とレムさんの目の前に歩を進めた。私を見るなり少しだけ目を細めてどうしたのと問い掛けてきた。
「あ…っと…この間は薬をどうもありがとうございました」 「あら、わざわざそれを言いに?」 「えぇまぁ…」 「ねぇメイさん…もしかしてさっきの話…」 「…………」
レムさんが気まずそうに私を覗き込む。ここで嘘をつくのもよかったが生憎私は嘘を突き通せるほど出来た人間ではない。嘘を突き通せば通すほどレムさんや0組に対して少なからず後ろめたい気持ちになってしまうからだ。 私はレムさんと目が合うと眉を下げて素直に謝った。
「聞いちゃってごめん…」 「……ううん、しょうがないよ。ありがとう、正直に言ってくれて」
レムさんは寂しそうに呟く。ドクター・アレシアは空気を読んでか黙って部屋の中へと戻っていった。気まずい空気が私たちの間に流れる。先に沈黙を破ったのはレムさんだった。
「メイさん…その、私の病気のこと皆には黙っててくれないかな」 「…うん、わかった」
さっきドクター・アレシアが言っていた守秘義務というものがあるのだから当然黙っておかなくてはならない。それにレムさんは最期の時がくるまで身体がしんどくても頑張ると言っているのだからそれを止める権利など私にはない。
「ありがとう、メイさん…」 「……でも、」 「ん?」 「あんまり、無理はしないでね」
そう言うとレムさんは微笑んで私にお礼を言った。
結局その後レムさんと別れて自室へと向かった。途中でエンラに頼まれた事を思い出したが、あの話を聞いたこともあるので少し気が引けてしまった。 また今度にしよう。その今度がいつになるかわからないけど。
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