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「なんであんたがここにいるの?!」


 サイスさんの言葉を遮ってこちらに近付いてくるケイトさんとシンクさん。確かに9組の私がここにいるのはおかしな話だ。なんでここにいるのと問い掛けたくなるのもわかる。


「サイス、何話してたのよ?」
「あぁ、こいつレム探してるんだとよ」
「レムっち〜?レムっちなら確か魔法局に行くって言ってたよぉ〜」
「魔法局…?」


 魔法局になんの用があって行ったのだろうか。でもまぁとりあえず魔法局に行ってみよう。ついでにドクター・アレシアが居たらお礼のひとつでも言っておかなくては。
 私は3人にじゃあ私はこれで、と言い教室を出ようとしたらまたしても呼び止められた。


「待って待って!えーとメイだっけ?」
「は、はぁ…」
「この間はごめんね!てっきりあんたがジャックのこと引き止めてると思って」


 ケイトさんの言うこの間とは、いつかのサロンでトレイと一緒にジャックを迎えに来たことを指しているんだろう。


「あーいえ、全然気にしてないんで…」
「よかったー、ちょっと気にしてたんだよね。任務中は謝る余裕もなかったし」
「ねぇねぇメイっち〜」
「メイっち…!?」
「いつからジャックんと仲良いのぉ?」


 シンクさんが身体をクネッと揺らし首を傾げて私を見る。メイっちと呼ばれたことに少し抵抗があったが、いちいち気にしていたら話が進まないと思い敢えてスルーすることにした。


「いつから…解放作戦が終わってすぐ、ですかね」
「へぇー!そうなんだ。知り合って結構長いんだねぇ」
「そこまでですよ」


 私は苦笑を浮かべて返す。サイスさんはずっと私たちのやり取りを黙って見ていてなんか気まずい。ケイトさんはそんなのお構い無しに話し掛けてくる。


「あ、ねぇそういえば聞いてよ!あんたも、ついでだから聞いて!」
「ん〜急にどうしたのぉ〜?」
「………はぁ」


 サイスさんは呆れ顔で溜め息をつく。私もサイスさんと同じく溜め息をつきたかったが流石に空気を読み心の中で溜め息をつく。ケイトさんはニヤリと笑い口を開いた。


「クラサメ隊長の昔の情報を入手したの!あ、メイはクラサメ隊長ってわかる?」
「有名ですからね。今は0組の隊長を務めているそうで」
「…あんたさータメ口でいいよ?アタシたちもタメ口きいてんだから」
「え、すみませ……ごめん」
「あとアタシのことはケイトでいいから」
「わたしのことも好きに呼んでいいからね〜」
「あ、ありがとう…」
「おい、んな奴とよろしくする必要ねぇだろが」
「いいじゃん!モーグリも他の組と仲良くしろって言ってたしさ」
「…………」


 サイスさんはちらりと私を見てすぐに顔をそらした。そしてあたしは仲良くする気はないから、とだけ言い教室から出ていった。
 改めまして、ケイトとシンクは気にすることないよとフォローを入れてくれた。


「あ、それでね、クラサメ隊長は昔朱雀四天王のひとりだったんだって!朱雀四天王ってのは超強い候補生4人がそう呼ばれていたって話。ま、今のアタシらみたいなもんじゃない?メイは違うけどさ」
「メイっちもレムっちやマキナんみたいに0組に配属されれば良いのに〜」
「え、遠慮しとくよ」
「もう、2人とも聞いて!でさその時の仲間のひとりに裏切られて、ひっどいケガを負ったんだってさ。それであのマスクってことよ」
「そうなんだ〜そんなにひどいケガだったのかなぁ」
「ま、あのマスクするくらいだしひどいケガだったんじゃないかな?それでね、その隊長を裏切ったっていう仲間はサボテンダーを連れていたんだって。そのサボテンダーは今も魔導院にいるって噂があるの。隊長もトンベリを連れてるじゃん?四天王ってモンスターを飼う趣味があったのかな?」
「モンスターを飼うって」
「ね、そしたら他の2人は何のモンスターを飼ってたんだろ。気になるよね!」
「まぁ確かにそうだけど…」


 ケイトのマシンガントークが終わり話題は四天王のモンスターへと移る。いつ抜け出したらいいかわからないままケイトの話に耳を傾けているとシンクがレムっちのところに行かなくていいの、と話を遮り言ってくれた。


「あっメイ、レム探してたんだっけ」
「う、うん」
「あちゃーなんかごめんね!引き止めちゃって。メイって話しやすいからつい、ね」
「今度時間あったらわたしとも話そうねぇ〜」
「…ありがと、じゃまたね」


 笑顔で送り出してくれたケイトとシンクに、私も笑って片手を挙げ0組の教室を後にした。


(………?)
(メイっちって〜いい人そうだよねぇ〜)
(…そう、だね)
(?ケイトどうしたの〜?)
(うーん、この感じ…なんか見覚えがあるような)
(?どういうことぉ?)
(…ううん、何でもない!)