32





 タイミング良くムツキの無線によってトレイから解放された私は魔法陣で研究所へと向かった。
 研究所へ着くと突然真正面から体当たりされた。誰だと言わなくてもわかる。私は体当たりされた拍子で尻餅をついてしまった。


「メイ!」
「いたー…どしたの、ムツキ」
「あいつらがー!」
「あいつら?」


 研究所の奥に向かって指を指すムツキに指の指している方向へ目を移すと、セブンとキング…さんだったかな、その2人がこちらを見て呆気にとられていた。
 私はあの2人を見てすぐにわかった。あの様子はムツキの被害にあったのだろう。相変わらずムツキの被害妄想っぷりはすごい。


「メイ…?その子と知り合いだったのか?」
「まぁ、ね」
「!メイ、こいつらと知り合いなのか!?」

(ゴッ!)

「だっ!」


 ムツキが勢い良く顔を上げたせいで今度は顎にムツキの頭がヒットする。私は研究所で大の字となって倒れてしまった。
 ムツキは大丈夫かメイー!と叫んでいて、ムツキは何ともなさそうだった。
石頭なのかなキミは。


「だ、大丈夫か?」
「いて…大丈夫…」
「ごめんなメイ…」
「ああ、大丈夫だよ。ムツキは大丈夫?」
「ボクなら大丈夫!」


 ムツキの頭を優しく撫でるとすぐに笑顔となり再び抱き着いてきた。そんなムツキの態度に唖然となる2人を見て苦笑した。


「お前は確か…」
「っ!メイをいじめる気だな!そうはさせないぞ!」
「ムツキ、この2人はいじめをするような人じゃないから大丈夫だよ」
「……ふんっ」


 ムツキは私の後ろに隠れ、2人を睨み付ける。まだ警戒心を解くには当分時間がかかるだろう。


「この間はお世話になりました」
「トレイからは聞いた。ジャックが迷惑かけているようですまない」
「まぁたいしたことないですよ」
「俺はキングだ、よろしく」
「あ、私はメイです。よろしくお願いします」


 ご丁寧に自己紹介をしてくれたので私も丁寧に返す。そういえばクイーンさんのときもそうだったけど、トレイは私のことをどう説明したのだろうか。
 セブンは腰に手を当てて怪訝な顔で口を開いた。


「今日はジャックと一緒じゃないんだな」
「そうだね、まぁでも毎日いるわけじゃないし」
「そうか…?私が見かけるときはだいたいジャックがくっついていたんだが…」
「そーかな」


 まぁ任務から帰ってきてまだ会っていないのは珍しい、ような気がする。
 私は昨日1日部屋に居たけど無線を使って連絡をよこすこともなかったし部屋に訪れることもなかった。そういえばエンラも同じようなこと言ってたな。日頃そんな風に私とジャックは見られているのだろうか。2人でひとつということかこれは…なんか恥ずかしくなってきた。


「メイ!海岸行こう!」
「え、なんで……あー、アレね」
「アレ?」
「アレとはなんだ?」
「約束だよ。ムツキとの」
「約束?」
「メイのこといじめるなぁ!」
「いじめじゃないよムツキ。じゃあまたね、セブン、キングさん」
「あ、ああ…」


 私はムツキに引っ張られながらセブンとキングさんと別れ、ムツキと一緒に魔法陣でエントランスへと戻るのだった。


(…不思議な奴だったな)
(メイはいつもああなんだ)
(どこかセブンに似てるな)
(そうか?)
(ああ、面倒見がいいところとかがな)