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ジャックとトンベリと共に教室に行くと、皆から笑顔でおかえりと言われた。久し振りの教室に息を大きく吸う。懐かしい匂いに思わず頬が緩んだ。 ケイトがニヤニヤしながら私を肘でつついてくるのを軽くあしらって席に着く。授業は相変わらず自習となっていて、たまにシンクとケイトが騒いでクイーンに叱られたり、寝ているナインを起こそうとしたモーグリが寝ぼけてるナインに捕まって投げられたり、と以前と全く変わらない日常がそこにあった。 遅れた分を取り戻そうと、クイーンとトレイから借りた魔法書を読み耽る。ふと誰かに見られていることに気がついて、私は視線を感じる方に顔を向けた。
「(あれ、マキナ…?)」
視線の先にはマキナがいて、いつの間に帰ってきたのだろうと眉を寄せる。マキナと目が合うと、マキナはばつが悪そうに目を逸らし窓の方に顔を向けた。 皆がお見舞いに来てくれるなか、マキナだけは来なかったのを思い出す。マキナとはあのチョコボ牧場で会ったとき以来だ。あのとき、マキナの様子が以前とは違っていて不思議に思ったのは今でも覚えている。現に、今もマキナは誰かと話すわけでもなくただ外の景色を見ているだけだった。 変なことに巻き込まれてないといいけど。そう思いながら、私は本に目線を戻した。
休み時間になると、私は数冊の本を抱えて席を立つ。すると、ジャックが私の名前を呼んだ。
「メイー!」 「ん?」 「クリスタリウム行くの?」 「うん」 「じゃー僕も行く。本持つよ、貸して」
そう言いながら持っていた本を全部持っていく。呆気にとられている私を他所に、ジャックはにっこりと笑った。
「行こ?」 「…ありがと、ジャック」 「いえいえ、どーいたしまして!」
嬉しそうに笑うジャックを見て、私もついつられてしまう。そこへふとマキナの背中が目に止まった。マキナの目線の先にはレムとケイト、そしてトレイがいる。何やら話をしているようで、マキナはふらりとレムたちに近付いていった。 私はマキナの方を見ながら口を開く。
「ねぇジャック、マキナっていつ帰ってきたかわかる?」 「マキナ?んーと、確かメイの目が覚めたあたりかなぁ」 「そう…」 「そういえばこの前、どうしていなかったんだろうねー?作戦サボるってポジションはどっちかってゆーと僕だよねー?」 「…いや、それ以前に作戦サボっちゃ駄目だから」 「あ、でもメイが参加する作戦は絶対サボったりしないから安心して!」
そういう問題ではない気がする。 ジャックの言葉に呆れていると、制止をかけるトレイの声が耳に入った。反射的にトレイを見遣る。
「我々が争っても、いいことはありません」
トレイがそう言うとケイトが一歩引いて小さく肩を落とす。何かあったのだろうか。四人に釘付けになっていると、今度はケイトの声が教室に響いた。
「はぁ〜!?」 「ケイト」 「………ふんっ!勝手にしな!」
ケイトはそう言うと踵を返して教室から出ていく。トレイはマキナとレムから離れて、ケイトの後を追うように教室を後にした。マキナとレムが何か話しているようだが、私たちにその会話は聞こえない。 それを見ていたジャックが不思議そうに首を傾げた。
「なんだか一触即発って感じだねぇ」 「…うん」
見てるこっちがハラハラする。やっぱり、今のマキナはどこかおかしい。チョコボ牧場で会った時も、今のマキナも、心ここにあらずという感じだ。本当に、何があったのだろう。 そんなことを考えながらボーッと二人を見つめていると、突然ジャックの顔が視界に入ってきた。しかもその距離は鼻と鼻がくっつくくらい近い。慌てて後退り、ジャックを睨み付けた。
「い、いきなり目の前に現れないでよね」 「だってメイってばずっとマキナたち見てるんだもん。どうかしたの?」 「え、ううん…何でもない、クリスタリウム行こっか」
そう言うとジャックはこくんと頷く。マキナのことが気になるけれど、今あそこへ行くのは野暮だろう。また改めて声をかけに行こうかなと思いながら、私とジャックは教室を後にした。
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