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──……ずっと…………かったよ。

──…も…………………かった。

──……れ……ても……………くから。

──………てもまた………………うよ。

──……て、……だから。



「………」


 ゆっくり瞼を上げると見慣れた天井が目に入る。
 そういえば昨日、トゴレス要塞奪還作戦が終わって撤退命令が下ってチョコボが迎えに来て背中に乗って、そこから記憶がない。私はどうやって部屋へと帰って来たんだろう。
 そろそろと起き上がると私はギョッとする。私の左手を握りいつもしているヘアバンドを外して、規則正しい寝息をたてているナギの姿がそこにあった。
 どうしてナギが私の部屋にいるんだろうか。


「………」


 まだ覚醒しきっていない脳を必死に働かせる。しかしいくら考えても何も思い出せなかった。
 そういえばさっきの夢は一体なんだったんだろう。誰かと誰かが話していた。誰と誰が話していたのかわからなかったけれど、なんだか懐かしいような、そんな感じがした。一体どんな夢だったんだろう。


「……ん、」


 私はナギに目を向けると寝惚け顔のナギと目が合う。
 ナギは私と目が合うとすぐに身体を起こし私の両肩を掴んだ。


「もう身体は大丈夫か!?」
「っうるさ…!だ、大丈夫だよ」
「お前なぁ、どれだけ俺が心配したか…!」
「ごめん、ごめんって、ナギ」


 だから落ち着いて、とナギをなだめる。
 ナギはまだ何か言いたかったのか口をぱくぱくとさせ、そしてわざとらしく深い溜め息を吐いた。


「……はぁ、まぁ無事で何よりなんだけどよ…」
「…ありがと、ナギ……ねぇ、あのさナギがチョコボの鎖を放したんだよね?」
「ああ、そうだぜ。ヒショウが慌てて俺んとこ来てチョコボが暴れてるっつーんで…」
「暴れてる?」
「お前が世話してるニンジャチョコボが暴れてたんだよ。んで見に行ったらそのチョコボ、なんか鎖を取って欲しいっていうような表情してきたから、取ってやったんだよ。そしたら牧場から逃げ出して」
「逃げ出した…?」
「…ま、俺は何となくあのチョコボの行き先がわかっちまったけどな。お前さ、トンベリといいチョコボといい生き物に愛されてんな」
「……まぁ、ね」
「戻ってきたときやっぱりお前が背中に乗っててよ、覗いてみたら特に外傷もなし、ただ気持ち良さそうに寝てるだけだったってわけ…やっぱ任務を立て続けに受けたのがいけなかったんだっつの」


 マジで心臓止まるかと思った、と言い私の頭を小突くナギにもう一度ごめん、と謝った。ナギは少しだけ微笑んで、今日は1日休むことと明日チョコボにお礼を言いに行くことを言い渡し部屋から出て行こうとする。その背中に向かって私は名前を呼んだ。


「ナギ!」
「ん?」
「…ありがと」
「おう!また来るからな」


 ナギが部屋を出て行ったのを確認し私はもう一度布団の中に潜り込む。布団の中に入ったらすぐに瞼が重くなってきた。
 少し、頑張り過ぎたかな。窓から暖かい陽射しが差し込まれるなか、私は再び眠りについた。


──あなたは、何を望むのかしら…?