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 どれくらいが経っただろうか。負傷した朱雀兵の人達を飛空艇で送り届けた私は空を見上げていた。


「……?」


 さっきまで聞こえていた爆発音の音が止む。戦いが終わったのだろうか。飛空艇と蒼龍の竜が空を飛んでいるのが見えた。あれを見る限り戦いは終わったのだろう。でも何故だろう。胸騒ぎがする。


「…!」


 空が光ったその刹那――。

 突然凄まじい爆発音と共にトゴレス要塞の建物が半壊した。私は爆発音のした方向へ目線を向ける。


「…なに…?」


 目を細めて見ると炎の中に人が見える。皇国兵と同じような格好をした人が炎の中で立っていた。
 私は目線が外せずそちらを凝視する。あの威力からして、只者ではないのは確か。ならば可能性はひとつ。

 あれは白虎のルシに間違いない。


「!」


 こちらを白虎のルシが見ているような気がする。自意識過剰かもしれないが、全身に寒気を感じるのは何故だろうか。


『緊急通達!』


 クラサメ隊長の無線で我にかえった私は慌てて無線へと神経を集中させる。


『シュユ卿がそちらへ向かわれる!この通信を聞く全部隊は直ちに撤退!!戦線を離脱せよ!!』


 切羽詰まったクラサメ隊長の声に、私もすぐトゴレス要塞から出ようとしたとき空から光が一直線にこちらに向かって来ているのが見えた。あれが、シュユ卿なのだろう。


「あれが…朱雀のルシ…」
「クエッ!」
「っわぁ!」


 耳元でいきなりチョコボの鳴き声が聞こえビビる私。振り返れば私が世話をしているニンジャチョコボが何故か居て、私は吃驚して固まってしまった。
 チョコボは早く乗れと急かすように私の背中を押す。とりあえず私は背中に乗るとチョコボに問い掛けた。どうしてここに、と聞いたらどうやらナギが鎖を外し私を助けに向かわせたようだった。
 本当にどこまで心配症なんだ。ありがとう、とチョコボの頭を撫でると元気な声で鳴くのだった。



──午後五時四十一分

 朱雀・蒼龍軍の圧倒的勝利に終わった。

【トゴレスの戦い】

しかし……

朱雀
戦死者 一万八百六十六名
負傷者 一万九千四百一名

蒼龍
戦死者 七百十二名
負傷者 千二百三名

皇国
戦死者 二万九千五百七十九名
負傷者 不明



 そして、五百年ぶりとなったルシ同士の激突は朱雀領トゴレスという大地を、オリエンスの地図より永遠に消し去った──。

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